現在アルバイト就業中のシニア(60~70代)で定年退職経験のある人に「定年制は廃止すべきか」と尋ねたところ、「そう思う」と「どちらかというとそう思う」が53.1%と過半数を占めた。
60代の回答者では「70代を超えても働きたい」が35.5%で3年連続増加。70代の回答者では「80歳を超えても働きたい」が16.5%で、こちらも3年連続増加している。
定年延長を決める経営陣「深刻な人材難に危機感」
この調査は、現在アルバイトに就業中または求職中の40~70代6400人あまりから回答を得たものだ。
70代で「80歳を超えても働きたい」人のアルバイトの目的は「家族の生活のため」が26.7%と最も多く、次いで「自分の生活費のため」が21.1%、「健康維持のため」が17.2%だった。
1位が自分ではなく「家族の生活のため」である点が気になるが、配偶者のためなのだろうか。年代的に見ると、就職氷河期世代の子息のためという可能性もある。
経済的にゆとりがあるかの問いに「あまりゆとりがない」「全くゆとりがない」と答えた人の割合は、ミドルシニア層(40~50代)で66.2%。シニア層(60~70代)の48.2%を上回っている。
回答者のうち、男性50代の平均年収は146.3万円。希望平均年収の202.7万円を時給1000円・12ヶ月で割ると169時間。月20日勤務として8.45時間で、サラリーマン並みの勤務時間となる。
都内企業の人事部に勤めるAさんに「定年」について尋ねると「うちは今年度から定年を65歳に延長し、本人が希望すれば70歳まで働けるようにしました」という。
「まず、現在の経営陣として『働く意欲と能力のある人には年齢や性別は関係ない』という理念を打ち出しているんですね。これは、表向きはダイバシティ的な思想に基づくものですが、裏では、これから生産人口の減少が進むので、60歳になった人を老人扱いして追い出すようなことをしていると、深刻な人材難で事業が立ち行かなくなるかもしれない、という危機感も持っているみたいです」
シニア層は「完全リモートワークで成果だけで評価する」
2023年6月に閣議決定された内閣府の「高齢社会白書」によると、2030年の高齢化率(65歳以上人口割合)は30%を突破する見込みだ。1985年には2603万人いた0~14歳人口は1240万人と半分に減り、その後も減少の一途を辿る。
65歳以上人口を15~64歳人口で支える割合は、1985年の6.6から2030年には1.9に。高度成長期には、高齢者1人を生産人口6.6人で支えていたのに、いまでは2人未満で支えなければならなくなる。
社会全体としても、65歳以上の高齢者に少しでも自立してもらわなければならない。そのためにも、高齢者はできるだけ働いて戦力になり、企業もそれを有効活用する必要があるだろう。
Aさんは「すでに多くの大手企業が、給与制度の年功制部分を縮小したり、ほぼなくしたりしてジョブ型に移行しているのは、高齢者の有効活用に備えたものともいえます」と説明する。
「たとえば当社では、40代以上社員の完全リモートワークを増やしているのですが、リモートだとアウトプットの成果だけで評価されるので、若い女性かロマンスグレーの男性かなんて関係なくなります。残業もなく割り切った関係で、決まったジョブをこなしてもらう。帰宅途中の一杯がなくなって寂しい、と感じる人もいるかもしれません。ですが、面倒な人間関係もなくプライベートを大事にし、ワークライフバランスが取れた生活になっていくのがこれからの働き方なのだと思います」