【開業12周年「東京スカイツリー」建設秘話(11)】どのような建設の技術がなされているか

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   東京の名所となった東京スカイツリーは2012年5月に開業、2024年5月には12周年を迎えた。

   2023年9月末までに来訪者の総数は4550万人、東京の新名所として定着した。そのタワーはどうやって建てられたか、技術的な工夫、アイディアを当時の現場責任者に聞いた貴重な証言、記録が残っている。

   J-CASTニュース内で過去に連載した「J-CASTスカイツリーウォッチ」のうち、スカイツリー建設に携わる人々にプロジェクトの舞台裏を聞く連載企画を再掲載します。

(註)インタビューした方々の年齢、肩書きは、開業当時のままを掲載させていただきます。

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【東京スカイツリー建設の技術】第1回:アンテナ用ゲイン塔の建て方を工夫した

   東京タワー(333m)の建設から50余年。この間、日本の産業技術は着実に進化を遂げてきた。これから始まる話は、その日本の産業技術の現在、商業(マーケティング)の現在の展開だ。634mの東京スカイツリーは、日本産業の裾野の上に建てられている。

   タワーの建て方には幾つかの方法が考えられる。一般的には、1本1本、柱を建てながら溶接して、上に継ぎ足していく積層工法で、ゲイン塔の先端まで建てていく方法がある。

   大林組はこの工法とは別に、ゲイン塔をリフトアップさせる方法で、品質面・安全面を考慮し、かつ工期的に短縮できる工法を提案した。これが未知の高さへ挑戦する東京スカイツリーを手がけることになる大きな理由となった。

   ゲイン塔はアンテナ用の鉄塔である。電波塔として一番大事な部分だ。

   タワー本体鉄骨工事と並行して、タワーのシャフト内部の空洞を利用して地上部でゲイン塔を組み立てていく。完成したときに最上部となる部分から組み立て始め、出来た部分をワイヤーで吊り上げながらその下に鉄骨を継ぎ足して行くという方法(リフトアップ工法)で作業を行っている。

   ゲイン塔鉄骨は6本の柱が水平材や斜材で結ばれた6角形の形状をしている。約10mの節ごとに分割されて組み立てられ、完成時は直径約6m、全長は定着部分も含め約165mの巨大な鉄骨となる。

   タワー中心部の直径10mの狭い空間で行われる作業は、通常の鉄骨組み立てとは逆に吊り上げながら組み立てるため、事前に三次元CADでシミュレーションされ、現場ではミリ単位の精度管理で進められている。

   組み立てから溶接や溶接部の塗装まで行う作業ラインは、500mを超える未知の高さではなく、屋内となるシャフト内部での効率のよい流れ作業となる。さながらミニ工場のようだ。(続く)

●東京スカイツリー建設の技術 田渕成明氏(株式会社大林組 新タワー建設工事作業所長)

大林組について
1892年(明治25年)創業。日本の大手総合建設会社の一つ。主な施工物件は、大阪城天守閣(1931年竣工)、ホテルエンパイア(横浜、1965年竣工)、明石海峡大橋(神戸市―淡路市間、1988年着工)大阪ドーム(1997年完成)、六本木ヒルズ森タワー(東京、2003年竣工)等多数。2008年、東京スカイツリーに着工。

田渕成明氏 プロフィール
1973年大阪市立都島工業高校卒業後、㈱大林組入社。 一級建築士、一級建築施工管理技師、監理技術者。
武道館建設や品川インターシティ、丸の内1丁目1街区、東京駅日本橋口ビル、池袋西口12番街区、新木場セントラルビルなどの新築工事に携わり、現在、東京スカイツリー建設工事作業所長。

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