「定額減税」知らない人多すぎ! 主婦4割「初めて聞いた」...ありがたみ帳消しな「混乱招く、政府のお粗末な指示」

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   2024年6月から1人4万円(所得税3万円、住民税1万円)の定額減税が始まる。

   ところが、意外に知らない人が多いことが、働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が5月23日に発表した調査「『定額減税』について、主婦・主夫層はどう思っている?」でわかった。

   定額減税が行われること自体を「知らない」人が4割を占め、「家計に影響はない」と突き放す人が半数に達した。なぜ、これほど冷ややかなのか、専門家に聞いた。

  • 定額減税で家計が助かるはずなのに
    定額減税で家計が助かるはずなのに
  • 定額減税で家計が助かるはずなのに

「子ども世代に、増税となって返ってくるのでは」

   定額減税は、岸田文雄首相の政権浮上策の目玉だ。減税効果を実感してもらおうと、企業などの雇い主に対し給与明細に所得税の減税額を明記するよう義務付けたため、事務作業量が増え、「恩着せがましい」といった批判さえ起こっている。

   しゅふJOB総研の調査(2024年5月15日~22日)は就労志向のある主婦・主夫層408人が対象。まず、定額減税が行われることを知っているかを聞くと、「詳しく知っている」が8.1%、「少しは知っている」が52.0%、「知らない」が40.0%だった【図表1】。このアンケートで初めて知ったという人もいた。

(図表1)定額減税が行われることを知っているか?(しゅふJOB総研調べ)
(図表1)定額減税が行われることを知っているか?(しゅふJOB総研調べ)

   定額減税によって家計のどんな影響があると思うかを聞くと、「家計が助かる」が34.3%、「家計に影響はない」が48.6%で、半数近くの人が期待していないことを示す結果となった【図表2】。

(図表2)定額減税は家計にどんな影響を与えるか?(しゅふJOB総研調べ)
(図表2)定額減税は家計にどんな影響を与えるか?(しゅふJOB総研調べ)

   フリーコメントでも冷ややかな意見が多かった。わかりにくいという批判が目立った。

「大切だが、分かりにくい。単発であり、持続効果が薄い」(30代:今は働いていない)
「企業の経理担当に余計な手間がかかるので、年末調整でやればいいと思う」(50代:今は働いていない)
「複雑で、現場の手間もかかるたった1回の減税では、やる意味がほとんどない」(50代:その他の働き方)

   実感がわかず、継続的な対策を求める意見も寄せられた。

「現金給付にしてほしい。物価が上がり過ぎて、4万円では全く足りない」(40代:今は働いていない)
「そもそも物価対策や税率を下げるなど、継続的な経済支援ができる形にしてほしい(40代:パート/アルバイト)
「減税されても実感がないから、給付金みたいな感じのほうがありがたい」(40代:今は働いていない)

   また、今後の増税を心配する声が多かった。

「子どもの世代に、増税となって返ってくるのではないかと心配」(50代:パート/アルバイト)
「定額減税は、この後に直面する増税で消えます」(60代:フリー/自営業)
「一時的に減税してもほかでかなり取られるので、結局一番損をする年収世帯です。いらんことはしないでほしい」(40代:パート/アルバイト)

給付金と違い...複雑で、わかりにくく、実感わかない

   J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。

――そもそも定額減税が行われること自体を「知らない」人が40%もいることをどう思いますか。私の知人で、今年から新NISAを始めた女性がいます。彼女に定額減税について意見を求めると、「なに、それ?」と全く知りませんでした。マネーに関心が深いはずなのに(笑)。

川上敬太郎さん 定額減税については連日報道されてはいたものの、減税という方式をとっているからか、誰に・いつ・どんな恩恵があるのかが具体的にイメージしづらく、いま一つピンと来ていない人が多いのではないかという印象を受けました。

一方で、ここ数年続いている物価高は真綿で首を締めるかのように家計を圧迫し続けています。「家計が助かる」と考えている人より、「家計に影響はない」と考えている人のほうが多いところに、一時的な減税措置だけではどうにもならない家計の現状が如実に表れているように感じます。

――定額減税は、支給額や支給方法をめぐり議論が沸騰した「コロナ給付金」に比べ、驚くほど関心が低いです。岸田政権は当初、「定額減税」の恩恵を武器に、解散・総選挙に打って出ると言われたものですが、この冷ややかさはどういう理由からでしょうか。

川上敬太郎さん 金銭的なメリットを考えると、減税自体はありがたいことだと感じている人は少なくないでしょう。しかし、給付金のようなわかりやすさがないことで、その恩恵がイメージしづらい印象があります。

一方で、防衛費絡みの増税やインボイス制度の開始、2024年度から始まる森林環境税の徴収をはじめ、社会保険の加入対象拡大や年金納付期間の65歳までの延長など、支出が増える話が次から次に出てきています。

さらには、物価高が加わり生活はあえぐような状態なのに、政治に対しては裏金問題で不信感が募っている状況です。それらの不安・不満要因が渦巻くなか、定額減税というわかりにくい施策はインパクトに乏しく、埋もれてしまうのかもしれません。

政府の指示で「どうでもいい仕事」に追われる自治体と税務署職員

――フリーコメントには、「この後に直面する増税で消える」とか「誤魔化されている感しかない」といった批判の意見が渦巻いていますね。

川上敬太郎さん 国民が感じている率直な声が寄せられていると感じます。一方で、なかには「良いこと」「有難い」と評価する声も寄せられています。物価高などで生活がひっ迫しているなかで、金銭的なメリットがある定額減税自体に反対という声は決して多くはないように思います。

しかし、寄せられた声の端々から、他の増税や政治不信の払拭といった根幹の問題を解決するのではなく、お茶を濁そうとしているかのような印象を受けている人が多いように感じられます。

――川上さんはズバリ、定額減税をどう評価しますか。

川上敬太郎さん せっかく打ち出した減税策なのに、少なからず冷ややかに受け止められていることが、とてももったいないと感じます。また、重ねて気になるのが、給付金のようなシンプルな形ではなく、定額減税という複雑な形にしたことによる事務工数の発生です。

企業からするとシステム改修費が発生したり、対応に社員の工数及び人件費をかけたりすることになります。実際に人事関係者からの悲鳴が耳に入ってきています。年末調整に影響する可能性があり、事務工数の増加は一時的なものでは済まなさそうです。

また、企業からの問い合わせを受ける税務署職員も対応に追われ、官民双方に残業や人件費のコストが増える要因となりえます。働き方改革を進めて長時間労働是正の機運が徐々に高まっていますが、せっかく生まれている流れに対して逆行しています。

――メリットもあるだけに、残念なやり方ですね。

川上敬太郎さん 定額減税にどんな意図があり、どんな効果を期待しているのか。国民にそれらのメッセージがしっかりと伝わっていないようです。あえて定額減税にしたことの納得感がなければ、対応に振り回される人たちには、不要に工数だけを増やす「ブルシットジョブ」(どうでもいい仕事)と受けとられてしまいかねません。

政府の指示によって生み出される仕事は、生産性の高い仕事のお手本であって欲しい。コロナ以降、人々は疲弊し続けてきました。政府にはぜひ、人々に寄り添った施策とともに、これからの生活が明るくなり希望を持てるようなメッセージを打ち出していただきたいと願います。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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