東京の名所となった東京スカイツリーは2012年5月に開業、2024年5月には12周年を迎えた。
2023年9月末までに来訪者の総数は4550万人、東京の新名所として定着した。そのタワーはどうやって建てられたか、技術的な工夫、アイディアを当時の現場責任者に聞いた貴重な証言、記録が残っている。
J-CASTニュース内で過去に連載した「J-CASTスカイツリーウォッチ」のうち、スカイツリー建設に携わる人々にプロジェクトの舞台裏を聞く連載企画を再掲載します。
(註)インタビューした方々の年齢、肩書きは、開業当時のままを掲載させていただきます。
第8回:戦後のタワー建造
1929年10月24日、ニューヨーク・ウォール街で起きた株価大暴落で世界恐慌がはじまると、塔の技術開発は中断された。物資不足が続き、軍事体制下のドイツでは木造の無線塔(1934年、190m)が架設されるなどした。再び塔の建設がはじまるのは、戦後に入ってからである。
1950年代、テレビの登場とともに、各地に新素材・RCによるコンクリート系の通信塔が建設されるようになった。シュツットガルトのラジオ南ドイツの遠距離通信用無線塔(1953年、208m)を契機に、西ドイツ、東ドイツにテレビ塔が建てられている。
モスクワで建てられたオスタンキノタワー(1967年、537m)やトロントのCNタワー(1976年、549m)もコンクリート塔である。
60年代、タワーはすでに500m級の時代を迎えていた。
以下、設計の専門家としての観点から、デザイン的にも技術的にもユニークなタワーを2つ紹介する。
●ゲートウェイアーチ(米国・セントルイス)
米国中部、ミシシッピ川沿いに広がるジェファーソン・メモリアル・エクスパンション・メモリアル。西部開拓を記念する広大な公園内に、優麗な曲線美を誇るゲートウェイアーチ(1965年、高さ192m)がある。
コンクリートと鉄で出来たこのアーチは、カテナリー曲線と呼ばれるアーチ形状の代表的な構造体である。内部は空洞になっていて、展望台へはゴンドラのような5人乗りのトラムで上る。設計者は、エーロ・サーリネン。ニューヨークのCBS本社ビルなどを設計したフィンランド出身の建築家である。
●コルセロラタワー(スペイン・バルセロナ)
香港上海銀行(1985年)の設計者として、一躍有名になったノーマン・フォスターが手がけたバルセロナの「テレコミュニケーションズタワー」(1992年、288m)。細い機械のような形でハイテクな印象を受けるこのタワーは、テンション部材を使用することで剛性や強度を確保、本体のプロポーションを可能な限り細くしたスタイリッシュなデザインを表現している。(続く)