一般に、新幹線の普通車は、3列+2列のシート配置になっている。もちろん、山陽新幹線や九州新幹線には2列+2列の配置もあり、またミニ新幹線は車両の大きさの関係で2列+2列となる。
しかし、東海道新幹線(全て)や山陽新幹線(一部除く)、東北・北海道・北陸・上越新幹線の普通車は、新幹線のワイドボディーを生かした3列+2列の座席配置で、高速でより多くの人を運ぼうと日々運行している。
新幹線は高速鉄道ではあるものの、デラックスというよりもむしろ大衆化した乗り物であり、高頻度運転が特徴となっている。高速・高頻度・大量輸送が新幹線の特徴で、それに対応できるように車内設備も整っている。
しかし、3列+2列とは面白い配列である。奇数と偶数だ。
最初に予約で埋まっていく席は
2人なら2列席、3人なら3列席、4人以上なら2列を2つ、5人以上なら3列と2列を組み合わせる。ビジネスパーソンであれ家族連れであれ、複数人の移動には便利だ。とくに夫婦と子ども1人、という組み合わせにはこれほど適したものはない。
では1人で乗るにはどうするか、というと困ってしまう。1列席はない。
新幹線に1人で乗る際には、E席に座る人も多いだろう。2列席窓側の座席であり、東海道新幹線でいうと内陸側の座席である。1人で乗る人が多い日は、この席から埋まっていくことが多い。もし隣のD席にだれも来なければ、ゆったりと座れることになる。
E席は東海道新幹線ならば普通車はどの車両でもコンセントがあり、スマートフォンなどの充電もできる。人気のN700Sではどの席でもコンセントが備えられているものの、N700Aでは窓側でしかコンセントが使用できない。東北・北海道新幹線のE5系・H5系は車両により異なる。北陸・上越新幹線のE7・W7系は普通車全席にある。
E席は充電ができ、隣に人が来ない可能性もあるという理由で、1人客には人気の高い座席である。とくに乗車中に作業をするビジネスパーソンには人気だ(休めばいいのに、とは思う)。
A席か、C席か?
その次に利用者が多いのは、A席であると考えられる。この席は窓側で、コンセントも確実にある。ただ、乗車中にトイレに行く際に、2人に声をかけなければならないという問題が発生する。
そこで意外といいと思われるのが、C席である。どうせ車窓は見ない、本を読んだり作業をしたりしているとなると、通路に近くトイレなどに行きやすいこの席を選ぶのもありだ。
「D席じゃだめなの?」とお考えの人も多いかもしれない。通路側という条件は同じだ。だがD席は隣のE席に人が座っていることが多い。C席ならば、B席に人が座っていないこともよくある。D席はC席が埋まっていた場合の「次善の策」として考えるといい。
さて、ここまでE、A、C、Dと続いてきた。残るはB席、3列席の真ん中、人気がない席だ。この席はほかの座席より広く作られている。ただ、この席しか選べないということは、ほかは埋まっていることになる。
正直なところ、この席にひとりで座るのは嫌なものだ。席が取れないのなら仕方ないが、誰かと一緒でない限りふつうは選ばれない席だ。
「S Work」を選ぶべき?
新幹線の中でも仕事をしなければならない人は、東海道・山陽新幹線なら「S Work車両」、東北・北陸ほか新幹線なら「TRAIN DESK」(休日や最繁忙期を除く)を選ぶのがいい。とくに「S Work車両」は、接続時間無制限の高速Wi-Fiが完備され、パーティションやドリンクホルダーも完備した「S WorkPシート」もある。パソコンの入力音などが多少あっても、問題にならない車両だ。
逆に、のんびりしたい人はこのような車両を選んではいけない。
スペースを確保したいからグリーン車、という人もいるだろう。もちろん、そのぶん高くなる。グリーン車は2列+2列の4列だ。
東京から新大阪に、通常時期に「のぞみ」で行く場合、「EX予約」指定席で1万4230円、グリーン車で1万9100円となる。差額は4870円。2時間30分程度の東海道新幹線で、この差額。ただ、普通のビジネスパーソンは出張旅費ではグリーン車には乗れない。自腹を切るかどうか迷うところだ。
ただ、グリーン車の中でパソコンをカチカチ、は他の乗客の迷惑となるだろう。
仕事をしたければビジネス向け車両、そうでなければふつうの車両ということで判断し、普通車ではA席からE席までどの座席に座るかは状況次第である。C席は意外とありだとは考える。E席が「いい席」なのは確かだが、外を眺めず仕事や読書をするのに時間を使うならば、窓側を選ぶ必要もないのでは。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。