上司の役割は部下に「作業」でなく「仕事」をさせること 根気よく「目的意識」を伝え続けよう

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?

   実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援企業FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。

   今回は、正社員に抜擢登用した若手部下を後継者へ厳しく育て上げた上司のエピソードです。

  • 若手部下を育てるには
    若手部下を育てるには
  • 若手部下を育てるには
    若手部下を育てるには
  • 若手部下を育てるには
  • 若手部下を育てるには

組織は、目的を実現するために多様な人が集う共同体

   <驚くほど細かい上司の指導も、いまは感謝 20代女性社員を成長させた「上司力」のポイントは>の続きです。

   自分では気づかないYさんのよさをいち早く見抜き、惜しみなく仕事に生かすよう進言した上司のKさん。

   そして、上司を信頼するがゆえに助言を素直に受け止め、実行することで抜群の成長ぶりを発揮したYさん。

   上司と部下として良好な関係にも思えますが、実はぶつかることも少なくありませんでした。

「それでも決裂することなくやってこれたのは、普段から互いに自己開示を心掛けているからだと思います。自分の胸の内を明かさなければ、相手の信頼も得られません。仕事中も休み時間も、必要最低限の会話だけでなく、一見無駄に思える話でも、たくさん言葉を交わすようにしています」(Kさん)

   Yさんは今、最近一緒に仕事をし始めた後輩社員の姿を見ていると、駆け出しだった頃の自分の姿に重なるといいます。

   そして、「あ、そういうことだったのか!」と、当時上司のKさんが言っていたことの意味を痛感するといいます。

   Kさんと、Yさん。2人は、次のように語っています。

「マネジメントとまではいかないまでも、これからは働きがいある環境づくりをしていきたい。私がKさんにしてもらったことを、今度は私が後輩ために考えていきます」(Yさん)
「組織とは、同じ目的の下に多様な人が集まってきた共同体です。その人たちといかに楽しく仕事ができるかを考えたり、何かを成功させた時の喜びを共有できるのが、醍醐味だと思います」(Kさん)

自分の仕事の「目的」を理解することの大切さ

   このエピソードから学べる点を、いくつか挙げてみましょう。

   職場では、日々に追われて組織全体としての目的を見失いがちです。

   広報の仕事を始めたばかりのYさんも、目的を理解しないまま働いていたがために、上司のKさんの言葉を理解することができませんでした。リリースの目的、ひいては組織としての目的を意識できていなかったのです。

   では、組織とはそもそも何なのでしょう。

   Kさんの最後の言葉のように、組織とは、同じ目的に共感した人たちの集まりです。当初のYさんのように自分の仕事に行き詰った時は、今一度、「組織の目的」に立ち返り、今やっていることが「誰の、何のためなのか」を見つめ直すことが大切です。

   生産性向上が強く求められる現代の企業組織の多くは、効率化や合理化の名のもと、各自の業務に細分化され、個々の目標達成が求められます。

   メンバーシップ型からジョブ型への流れも顕著です。

   これは短期業績を上げるためには奏功するかもしれませんが、一方でKさんの指摘のように、「仕事」思考ではなく、「作業」思考の人や組織を増長させるリスクにもつながるのです。

   ともすれば、みな懸命に働いているのに何の価値も生み出せていない状態、つまり忙しさに惑わされて仕事をしたつもりになりかねません。

   変化が激しく、現場での臨機応援な対応が求められる今日、この負の側面は中長期的には企業にとっての致命傷になりかねません。

   変化の時代だからこそ、組織の目的、さらには組織に貢献する自分の仕事の目的を理解し、柔軟に行動できる人材が求められるのです。

「楽しい!」と実感できる職場づくりを

   働く一人ひとりにとっても、作業だけをこなしていたら退屈な毎日しかなく、仕事の楽しさを感じることも、自身の成長もないでしょう。

   何より、目的意識が身に付くことで、成果を上げた時の達成感も大きく得られるようになるのです。

   ただ、入社早々のYさんのような若手時代には、現場で目的意識を鍛えてくれる師が必要です。

   私は主催する「上司力(R)研修」の中で、「上司は部下に単に『作業』の指示をするのではなく、目的や背景を伝え『仕事』をさせましょう」と伝え続けています。

   暗黙知や阿吽の呼吸が当たり前だった昭和や平成の時代に育った上司世代は「そんなことまで言わなくてもわかるだろう」とつい考えがちだからです。

   エピソード中の上司のKさんは、上司の忙しさを言い訳にせず、根気よくYさんに目的意識の大切さに気づかせ、成長の手助けをしてくれていたのです。

   また、KさんもYさんも、職場での縦横斜めのコミュニケーションをしっかり取ることの大切さを理解し、実践していました。

   こうした組織風土を意識して作り、守り育てることも大切です。

   忙しい毎日でも、表面的な「作業」のやりとりだけではなく、常に「仕事」の目的を互いに共有し、浸透させ合い、目的に向かう組織の一体感の醸成に努めること。上司と部下の双方が、それぞれの立場で心がけ、進めていきたいものです。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

姉妹サイト