思わずだまされかけた...その理由
記者の場合、相手を信じかけた大きな理由は、「住所」だ。「警察官」が、記者が過去に住んでいた住所を読み上げてきたのである。
「○○さんの住所で間違いないですか」
「は、はい。すでに引っ越していますが......」
しかも、マネーロンダリングに使われたというA銀行の口座も、確かに持っていた。さらに、この何年もまったく手をつけておらず、どうなっているのか把握していない。
(......ありうるかもしれない)
名前。電話番号。住所。銀行口座。それをすべて知られていたことで、一瞬信じかけてしまったのだ。恥ずかしながら。
だが、今思えばこれこそが犯人の思惑だ。住所や電話番号などの個人情報さえ手に入れてしまえば、あとはA銀行も大手のネットバンクだから、口座を持っている人は多いし、サブ口座的に使っていて、放置状態という人も少なくないだろう。記者はまんまとハマりかけてしまった。
「漏洩した個人情報などを元に、勝手に作られた可能性はありますが、法的にはあなたの口座ですから、捜査対象ということになります」
捜査対象、という部分を、「警察官」は少し強調する。それだけでこちらは、ついドキッとしてしまう。
「住所はすでに変わっているとのことですが、現在のお住まいは?」
思わず現住所を口にしかける――が、さすがにブレーキがかかった。
「......失礼ですが、こちらの電話は本当に警察からなんですか?」
「はい、私は警視庁捜査二課のオオタニマコトです」
うーん、答えになっていないような......。だが、こちらに深く考える時間を与えず、「警察官」は畳みかける。
「いずれにせよ、そういう事情ですので......。○○さん、香川県警本部のほうに出頭いただくことは可能でしょうか」