東京の名所となった東京スカイツリーは2012年5月に開業、2024年5月には12周年を迎えた。
2023年9月末までに来訪者の総数は4550万人、東京の新名所として定着した。そのタワーはどうやって建てられたか、技術的な工夫、アイディアを当時の現場責任者に聞いた貴重な証言、記録が残っている。
J-CASTニュース内で過去に連載した「J-CASTスカイツリーウォッチ」のうち、スカイツリー建設に携わる人々にプロジェクトの舞台裏を聞く連載企画を再掲載します。
(註)インタビューした方々の年齢、肩書きは、開業当時のままを掲載させていただきます。
4回:人間の手でひとつずつ
●施工技術の向上
製鉄技術の進歩とともに、接合技術も進歩している。
古い鉄橋などを見ると、ポチポチが出ているリベット接合になっているが、当時はこのような接合方法しかなかった。エッフェル塔や東京タワーの時代の接合方法だ。
東京スカイツリーは、大きな丸パイプを溶接接合したものを使っている。エッフェル塔や東京タワーが作られた当時は溶接技術がそんなに進んではいなかった。
スカイツリーの場合、いちばん下の足元のところで、10センチの板厚同士を溶接しなくてはならない。これを実現する溶接技術は以前にはなかった。
僕の記憶では、10センチの板厚の柱を使ったのは、1990年に完成したNECスーパータワーという高層ビル(高さ180m)が初めてだと思う。
スカイツリーの現場でも溶接接合している。ただし、色々な方向から鋼管が集まってくる部分(仕口部―分岐継ぎ手部)は形状が複雑なので現場でなく、工場で加工作業をしている。
仕口部(分岐継ぎ手部)が工場で溶接されて現場に運ばれ、柱材、斜材、水平材などと現場で溶接されて連結される。今回のスカイツリーの場合は、個々の部材も非常に大きな鋼管となるためいくつにも分割して現場に運ばれている。
一本の部材が長いと重すぎてトレーラーで運べなかったり、現場到着後クレーンで持ち上げられないといったことから短いピースに分割しており、そのため現場での溶接量が非常に多くなっている。この溶接量の多さに対応する意味でも溶接性にすぐれた鋼管を使用する必要があった。
現場での溶接作業は上下を金具で固定して動かないようにして行う。溶接作業は溶接工が一か所ずつ手作業で行なう。溶接した部分は必ず超音波でひとつずつ検査する。溶接が不完全で欠陥のある部分は取り除き、もう一度やり直す。結局それを全部やっていかなくてはならないので、現場での作業は大変なものになる。(続く)