近年、炊飯器や掃除機などの家電製品を買わずに使う、あるいは買う前に試す「家電レンタルサービス」を利用する人が増えている。
どこが人気で、どれだけ利用者がいるのか。モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2024年5月14日に発表した「家電レンタルサービスに関する調査」によると、1割近くの人が利用しているという。
人気サービスのそれぞれの魅力や、レンタルする際の注意点を調査担当者に聞いた。
一時的使用や「お試し」が多く、満足度が90%以上
家電レンタルサービスは、購入を迷った時に「お試し」で使ったり、一時的に使う家電を短期間借りたりする時に便利だ。レンタル期間の上限が決まり値段が安いうえ、気に入ったらそのまま購入するサービスもある。
たとえば、業界最大手の「ゲオあれこれレンタル」のウェブサイトには多くの家電製品の写真が並び、クリックすると、こう書かれている(税込み価格)。
「運動会シーズンに大活躍!ビデオカメラ各種 4泊5日4300円~」「脱毛器・光美容器 1か月4280円~」「iPhone、iPad、アップルウォッチ、会話AIロボット 14泊15日4480円~」「炊飯器・電気圧力鍋 月額1980円~」「高圧洗浄機 3泊4日5980円~」「全自動コーヒーマシン 14泊15日6980円~」といった案配だ。
MMD研究所の調査(2024年4月24日~26日)は、全国の18歳~69歳の男女7000人が対象だ。まず、家電レンタルサービスの認知度を聞くと、半数(50.6%)が知っていると答えたが、「内容を理解している」と答えた人は16.1%にとどまった。利用経験がある人は8.2%だった。
利用経験者にどのサービスを使ったかを聞くと、「ゲオあれこれレンタル」(18.3%)が最も多く、次いで「おトクレンタル.com」(18.0%)、「家具・家電のレンタル&リース」(17.8%)と続いた【図表1】。
そのサービスへの満足度を聞くと、「満足」(41.2%)、「やや満足」(50.0%)と合わせ、9割以上(91.2%)が「満足」と回答した【図表2】。
どんな時にサービスを利用するのか。【図表3】が利用したシーンだが(複数回答可)、「一時的に必要な家電があるとき」(39.1%)が最も多く、次いで「購入を検討している家電があるとき」(37.3%)、「家電が壊れたとき」(28.3%)となった。やはり、臨時の使用や「お試し」が多いようだ。
ただ、トラブルや不安もつきまとう。利用経験者と未利用者に懸念点を聞くと、双方ともトップ3に「コスト」「返却の手間」「衛生面」が挙がった【図表4】。特に、コストはレンタル期間が長くなると、買ったほうが安くなるという問題だ。
どんなサービスか、内容を知らない人が多いのが課題
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったMMD研究所の担当者に話を聞いた。
――家電レンタルサービスの「認知」約50%、「内容理解」約16%、「利用経験」約8%と言う数字、率直に言って多いでしょうか、少ないでしょうか? 他のサブスクサービスと比べていかがですか。
担当者 「認知」が全体の半数ですから、知っている人は少なくないと考えています。しかし、「内容理解」が16%と、認知していても内容を理解している人は多くない印象です。
近年、モノを「買う」から「借りる」傾向があるなか、モノのレンタル調査として2022年に「洋服月額レンタルサービス」の調査を実施しました。業界が違うため比較は難しいのですが、認知は53%、内容理解は24%、利用は3%でした。ネットから借りることができる点でどちらのサービスも利用者は10代~30代が多い傾向はあります。
――洋服レンタルに比べ、家電レンタルのほうはまだどういう時に、どんな人が利用するのかあまり知られていないということですね。
担当者 利用シーンに関して、調査結果では「一時的に必要な家電があるとき」「購入を検討している家電があるとき」「家電が壊れたとき」の順で多い結果となりました。
「一時的に必要な家電があるとき」に関しては単身赴任や長期旅行で家電が必要な時など、購入するまでではないとか、今後も継続して使うか分からない状況下でレンタルする人が多いと考えています。
気に入れば購入可、トップ3社の個性あふれるサービス
――それにしても、家電レンタルの満足度が非常に高いですが、その理由は何でしょうか。
担当者 満足している理由は聞いていないのですが、懸念点を聞いた設問での利用者と未利用者の差を見ると、「返却の手間」と「コスト」などが未利用者よりも利用者は懸念点と感じていなことがわかりました。
つまり、思ったよりも返却が手間に感じなかった、コストがかからなかったことなどが満足度につながっていると考えられます。
――その懸念点ですが、今後利用するうえでの注意点があれば、アドバイスしてください。
担当者 懸念点では「コスト」が最も多い結果となっています。1~2回の一時的な使用の場合は、レンタルのほうがコストはかからない場合もあるため、自身の利用シーンがレンタルにあっているのかどうか、しっかり把握することが必要と考えられます。
――家電レンタルの上位3社には、どんな人気の秘密、特徴があるのですか。
担当者 たとえば「ゲオあれこれレンタル」は、「短期」「月額」とレンタル期間が選べるうえ、使ってみて気に入った家電は購入をすることができます。
「おトクレンタル.com」は、生活家電を1つずつではなく、必要な家電を6点または3点選んでレンタルできるセットプランがあります。
「家具・家電のレンタル&リース」は、必要最低限の家電から急な引っ越しの家電セット、新生活用の家電セットなど利用シーンに合わせて家電をまとめてレンタルすることができます。
家電レンタル業界の再編や参入が急ピッチで進む
――なるほど。それぞれのサービスに個性があるのですね。家電レンタル業界は今後どう発展していくでしょうか。
担当者 モノを「買う」から「借りる」傾向が近年増えているため、特にネットを介して、自宅から簡単に借りることができるレンタル市場の需要は今後も高まるのではないかと考えています。ただ、内容理解をしている人がまだ少ないため、内容理解に注力することが今後重要かと思います。
家電レンタル業界の再編や参入が急ピッチで進んでいます。今年(2024年)4月に、ヤマダデンキとみずほリースが家電のサブスクサービス「ヤマダビジネスレンタル」の共同提供に向けて、業務提携契約を締結しました。近年家電などの大型の物のレンタルへの参入が増えています。
今後も各社の動きを含め、市場の動向も見ていきたいと思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)