日本国内の移動人口の状況に変化が生じている。
移動人口とは、人の出生および死亡にともなう自然増減とは違って、特定の地域から別の地域へと移動した人の数:社会増減を示したものだ。
この移動人口が、コロナ前の状況に戻りつつある。住宅市場には、どのような影響が出ているのか。LIFULL HOME'S総研副所長・チーフアナリストの中山登志朗(なかやま・としあき)さんが解説する。
◆世代ごとに異なる人流の動きにも注目を
移動人口の状況を見ていくと、現在、どのエリアに人が集中していて、どのエリアから人が流出しているのかが明らかになります。それは、足元および近い将来の住宅需要の重要な指標になり得ます。
一方で、私の所属する、LIFULL HOME'Sの「みんなが探した!買って住みたい街ランキング」では、アンケート調査ではなく、年間にユーザーから寄せられた実際の問合せ数を最寄り駅単位で集計&ランキング化しており、移動人口との相関性が必然的に高くなっています。
都市圏に集中する移動人口の現状とは対照的に、世代ごとに異なる人流の動きにもぜひ注目いただきたいと思います(なお、このデータは外国籍の方の国内移動による転入・転出も含めています)。
首都圏:年間12万6000人の圧倒的「転入超過」 世代間の違いが鮮明に
首都圏(1都3県)は、2023年の移動人口が126,515人の転入超過となりました。コロナ禍にあった2022年は9.9万人の転入超過に留まっていましたから、約30%の転入増が発生し、本格的にコロナ後の社会に変化していることが明らかです。
差し引きで年間に12.6万人も転入増があれば、住宅需要が活性化するのは当然のことで、首都圏全域で住宅価格も賃料水準も上昇する一因となっています。
最も転入超過が多かったのは東京都の6.8万人。神奈川県でも2.8万人、埼玉県2.5万人の転入増を記録していますが、千葉県だけ0.5万人に留まっています。
これは神奈川県、埼玉県では実家もしくはその周辺に居住しつつ、都心方面に通勤・通学する人が多いこと。
これに対して、千葉県では主に若年単身者層が地元を離れて、都心方面に転居するケースが多いためです。
都内に近い市川市や浦安市への転入増が多いのに対して、房総半島方面の各自治体では専ら転出超過が発生しています。