【開業12周年「東京スカイツリー」建設秘話(3)】「今までにない形を」なぜこのデザインを採用したか

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   東京の名所となった東京スカイツリーは2012年5月に開業、2024年5月には12周年を迎えた。

   2023年9月末までに来訪者の総数は4550万人、東京の新名所として定着した。そのタワーはどうやって建てられたか、技術的な工夫、アイディアを当時の現場責任者に聞いた貴重な証言、記録が残っている。

   J-CASTニュース内で過去に連載した「J-CASTスカイツリーウォッチ」のうち、スカイツリー建設に携わる人々にプロジェクトの舞台裏を聞く連載企画を再掲載します。

(註)インタビューした方々の年齢、肩書きは、開業当時のままを掲載させていただきます。

  • 東京スカイツリー
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3回:未知への挑戦

●「下は三角、上は丸」のデザイン

   非常に重要なプロジェクトであるため、デザインの参考とするために社内から広く、提案を求めた。およそ100案のデザインが集まった。

   提案された案の中には、現実的な案からユニークではあるが現実性となるとどうか?という案など、さまざまなバリエーションがあった。それらの提案も横目で睨みながら、設計チームでまとめた案を最終デザインとした。

   デザインの条件として、600m級のタワーなので、合理性ははずせない。地震や風に合理的に抵抗できるものでないと、鉄骨量が無駄になる。奇抜なデザインでは、経済性や構造の点でダメになってくる。とはいっても、今までにはないユニークなところが欲しいという風に考えていた。

   それから、「なぜこのデザインなの?」と聞かれたときに、「面白いから」ということだけでは、説明にならない。合理性をポイントに考えながら、今までにない形を作ろうということで進めていった。

   普通のタワーは、上から下まで同じ断面の形をしている。しかし今回は、下が三角形で上部は円形というデザイン。これは実は、ありそうでなかった。

   足元は狭い敷地でも近隣への環境的影響を配慮しながら一番踏ん張りがきく三角形だ。しかし、東京スカイツリーは2つの展望台を作るという条件があった。

   ここでは360度・全方位が見渡せるようにということで円形がいいだろうということになった。それで、三角と円形の組み合わせると合理的でかつ、ユニークな形ができる可能性があるのではないということになった。

   三角形を途中で円形にするというのは、デザイン的には考えられても、技術的にはむずかしい面がある。どのあたりで三角形を円形にするかというので、デザインの印象も変わってくる。

   三角形から円形に徐々に変えることによりタワーの外観に変化が出てくるし、見え方の印象がだいぶ違ってくる。「そり」(日本刀のようなゆるやかな凹形のカーブ)、「むくり」(そりとは逆の凸形のゆるい円弧)という形状が出てくるのだが、そこがデザイン上の一つのキーポイントとなる。

   三角形から円形になるのをどの辺で切り替えるかというスタディを、相当の時間をかけて行った。彫刻家の澄川喜一先生にも助言を頂いた。

   もちろん、構造の合理性ということがあるので、CADで作図してみて、ふくらみの具合を見て、何度もやり直した。

   また、実際に立体的に模型をつくってみた。

   実際に模型に作ってみると、CADで見ている時とは違ってくる。たとえば、「むくり」が大きすぎて少し重ったるく見えるとか。

   検討にはあまり時間の余裕がなかった。社内でのデザイン提案募集から始まり、設計チームのほうで三角形から円形になるという方向性を決めるまで、1年弱くらいかかった。すべて三角形の案や、円形だけの案とか、違う案もいくつも試した。

   最終的な微調整は設計を進めながら、バリエーションを作って検討していった。(続く)

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