男性アイドルグループ「King & Prince」のイベントで、山口市内のJR新山口駅で約1000人のファンが「帰宅難民」となり、X上でその様子が実況される騒ぎになった。
会場と駅を結ぶシャトルバスが渋滞に巻き込まれ、山陽新幹線の終電に間に合わなかったためだ。主催者は、事前に混雑で新幹線に間に合わないバスがある可能性を告知していたが、なぜこんな大量の帰宅難民が出たのだろうか。
「被災地って感じです」ファンが駅構内で過ごした実感を吐露
「寒いし足腰痛いし」「充電がやばいぞ!」。新山口駅の構内で1夜を明かしたキンプリファンの「ひなた」さん(@kyor_0423)は、X上でこんな悲鳴を上げた。
2024年5月22日夜は、キンプリの2人が出演するイベント「King & Princeとうちあげ花火」が山口市内の「山口きらら博記念公園」で約3万人が参加して行われた。ところが、閉演後に会場から新山口駅に向かうシャトルバスが渋滞に巻き込まれ、23時前に終わる新幹線の終電に間に合わず、帰宅難民が続出した。
ひなたさんは23日、J-CASTニュースの取材に応じ、それによると、イベントは、閉演予定時間の20時30分ごろの10分前には終わった。退場規制が行われる中で、ひなたさんは、2回目の案内で閉演10分後ぐらいに座席のブロックから抜け出したが、退場口を出ると、もうバスを待つ列ができていた。イベントが終わる前に出たとしても、新幹線に間に合うかギリギリだったという。
ひなたさんが投稿した動画を見ると、ファンらが駅構内の壁沿いなどにブルーシートを引いて座り込み、トイレ待ちとみられる長い列ができていた。
「被災地って感じです」。ひなたさんは、こう投稿し、朝になって、やっと新山口から博多に向かう新幹線の始発に座ることができたと報告した。
大量の帰宅難民に対しては、新山口駅の駅員がブルーシートを配り、非常食のペットボトル入り水やビスケットを配っていた、と感謝する投稿がX上で相次いだ。
「最後のお客様が乗車されるまで3時間程度の時間を要することが予想されます」
JR西日本の中国統括本部は5月23日、取材に対し、帰宅難民が1000人ぐらいいたと明らかにし、駅員がこうした対応をしたと説明した。
イベントに備え、会場最寄りとなる在来線の宇部線・阿知須駅から上下線で各3本の臨時電車を出したとしたが、新幹線については、遠くから来る客は終電をチェックしているはずだとして、臨時は出さなかったという。
帰宅難民が出たことについては、「主催者が注意すればいいことですので、要望などを申し上げることはありません」と話した。
新山口駅などを管轄する山口県警の山口南署は同日、取材に対し、閉演後に、事前予約販売された会場隣接の駐車場から一般車が一斉に出たため、シャトルバスが渋滞にはまって新山口駅に到着するのが遅れたと答えた。事故渋滞だったとの情報がX上で出回っていたが、同署は、その事実を否定し、自然渋滞だったとの見方を示した。
帰宅難民のトラブルは聞いておらず、住民などからの苦情も把握していないという。計画に無理があったのかについては、「主催者は、色々と対策を考えられていたようですし、こちらからコメントする立場にはありません」と述べた。
シャトルバスの利用について、主催者も、事前にファンに注意は呼びかけていた。イベントの公式サイトでは、「公演終了後のシャトルバス乗車には混雑により、最後のお客様が乗車されるまで3時間程度の時間を要することが予想されます」「新幹線等の希望される時間の交通機関に間に合わない可能性がありますので予めご了承ください」と書かれてある。
それでは、会場に隣接した駐車場の運営に問題はなかったのだろうか。
主催者「今後はないようにチェック体制を徹底」
イベントを主催したユニバーサルミュージック合同会社(東京都渋谷区)の広報担当者は5月23日、取材に対し、「状況を確認しており、細かいことについては分かりません。結果的に、お客様が終電に乗れず、ご迷惑をかけたのは事実です。なぜこういう形になったか原因などを確認したうえで、今後はないようにチェック体制を徹底します」と話した。
同社は同日、イベントに関する報告とお詫びのプレスリリースを公式サイトで出した。
そこでは、今回のことについて、「本公演は予定通り20:30に終了し、お客様の送迎を開始いたしましたが、交通の渋滞や混雑などが生じたことにより、新幹線の終電に間に合わなかった多くのお客様が駅構内で始発の時間までお待ちいただくこととなりました」と説明した。そして、「事前にホームページ等で現地の交通事情についてご案内しておりましたが、お客様の帰宅が困難となり、ご迷惑おかけいたしましたことを重ねて深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
また、「JR新山口駅に留まることになったお客様に毛布・飲み物を配布するなどの対応をして頂いたJR西日本様にお詫び申し上げるとともに、ご厚意に深く感謝致します」とも述べ、「今後のイベント開催につきましては、改めて事前のリスクチェックを徹底の上、お客様に最後まで安全かつ快適にお過ごし頂けるよう努めてまいります」と締め括っている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)