人気ロックバンド「ONE OK ROCK」のライブで、ステージサイド席はメンバーの姿が見にくく音も聞こえにくかったとして、参加したファンからX上で不満の声が相次いでいる。
このような席も含めて、チケット代はすべて1万3000円(税込)だった。どんな問題点があったのかについて、ファンの1人に取材して話を聞いた。
「メンバーの姿が逆光で見えず、歓声で音が聞こえなかった」
不満の声が出たのは、ワンオクが女性歌手のAwich(エーウィッチ)さんとコラボして、埼玉県所沢市内のベルーナドームで2024年5月19日に行ったライブだ。ワンオクの事務所が企画・制作し、ソーゴー東京が主催した。
このライブでは、ワンオクの有料会員制度の登録者を対象に、チケットの先行受付も行った。登録者が申し込みをすると、抽選で席が当たるシステムになっている。指定席のほかに、メンバーが見えにくかったりする注釈付き指定席もあったが、チケット代金は同じだった。
ところが、ライブ後には、ステージサイド席になったファンを中心に、注釈付き指定席でなくても、メンバーが見えにくかったり、音が聞き取りにくかったりしたという投稿がXで相次いだ。
ある有料会員のファンは同日、「当選しても悪目の席になる事は正直よくあります」としながらも、「この席はほぼ見切れ席で、ライブはスクリーンもほぼ何が映っているか分からず逆光でアーティストもあまり見えなかった」とX上で問題提起した。「方向的に歓声が入ると曲はほぼかき消され、とてもこの距離での音とは思えない物でした」とも指摘した。
会場を写した写真もいくつか投稿しており、メンバーらを映すスクリーンが横からわずかに見えるだけで、ステージ前の観客を見るような席になっていた。
このファンは、「ライブは最高でした」「アーティストを批判したい訳ではない」としたうえで、座席販売のあり方に疑問を呈した。ワンオクの有料会員に先行して販売するような席なのかと指摘し、「この席は見切れ席として売るか一般に回して欲しかった」として投稿の拡散を求めた。ファンの投稿は、大きな反響を集め、内容に同意するリプライも次々に寄せられている。
投稿したファンは21日、J-CASTニュースの取材に応じ、会員として普通の指定席を購入してステージサイドのブロック席にいたと明かした。
「本来売ってはいけない席で、売るなら価格を下げるべき」
このファンは、当時の状況を、次のように説明した。
「曲が聞こえないのは主にスピーカーの方向がこちら側に向けられていないのと、今回の座席の角度がアリーナなどの客席側に向いてしまっている為、スピーカーの音が歓声が入るとその大きさに負けてしまう為です。また、メインの真ん中のステージ近くの照明が今回の座席に直接向いてしまっていて、その時はアーティストが完全に光で隠れてしまう上、照明の明るさが強過ぎて眩しかったです」
そのうえで、このファンは、「このような席は本来売ってはいけないと思います」「もし売るのではあればここは勿論注釈付き指定席にするべきですし、価格も下げるのが妥当だと考えます」などと述べた。また、「アーティスト側もリハなどの際に様々な席から景色や音響を確認するべきだと思います」と指摘した。
ファンが主催者のソーゴー東京に問い合わせたところ、担当者にこの件は伝えて今後のライブの参考にする、といった内容の説明があったという。
音楽イベントを巡っては、購入した座席が見えにくいなどと不満が相次ぐ騒ぎが最近目立っている。
「これは最近の音楽業界全体の問題だと思う」
シンガーソングライター松任谷由実さんが23年5月に行ったコンサートでは、見えにくかったりするとされた注釈席について、まったく見えなかったと不満が相次ぎ、スタッフが謝罪する事態になった。
また、K-POPグループ「SEVENTEEN」が24年5月に大阪で行ったコンサートで、花火の一部が飛び込んだ近くのステージサイト席について、打ち上げ場所に近いので販売すべきではなかったなどの批判がX上で相次いだこともあった。
今回投稿したファンは、見えにくい席があったことについて、「これは最近の音楽業界全体の問題だと思う」と取材に指摘した。こうした席が販売される背景について、「コロナ禍で音楽業界も打撃を受けて現在も円安の影響で物価が高騰している為、チケットの値段も上がり、一人でも多く客を入れようと運営も必死になって売っているのかもしれません」との見方を示した。
J-CASTニュースでは、ワンオクのライブを主催したソーゴー東京に21日から取材を申し込んでいるが、担当者は出張中などとして、申し込みから24時間以上経過した22日17時30分までに回答が得られなかった。回答などがあり次第、追って伝える。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)