カウンセラーに求められる「専門性」
藤井教授は、カウンセラーには相談者の問題や悩みの根本を捉え、適切な解決方法を判断するといった技術が必要だと指摘し、その技術がわずか数か月間で備えられるかどうかを疑問視する。
「相談に来られた方の問題や悩みが心理カウンセリングで解決するものなのかどうかという専門的判断が必要です。例えば、心の悩みのように言っているけれど、実は解決方法としては法律家に助けを求めた方がいいとか、家族に相談した方がいいとか、心理カウンセリング以外の方が向いている場合もあります。しかし、それは表面的には分かりづらいので、多面的な見立てを行い、解決の実現可能性を吟味する必要があります」
問題や悩みがカウンセリングで解決する可能性があると仮定できた場合も、専門性は必要だ。
「最初の面接で何を聞き、何を明らかにし、どういう情報を聞くかというのも一応フォーマットがあるのですが、単純にアンケート形式で聞いていけばいいというわけではなく、その人の特性や経緯を踏まえて、必要な部分を聞かなければなりません。混乱していればこそ、整理して話せないのが普通ですから。
例えば『死にたい』と言って来ている人に対して、なぜ死にたいのかの背景を専門的視点から理解できていないと、対応自体がずれてしまって、どんどん悪化することもあります。実際にそれで命を落としてしまったケースも、これまでにあります。そもそも死にたい理由が、本人さえ認識できていない例は稀ではありませんので、見立てるのは容易ではありません」
言葉での表現がまだ未成熟な子どもを対象にすることは、大人以上に難しいとも懸念する。