公認心理師・臨床心理士にも違いを聞いた
公認心理師・臨床心理士の資格を持つ専門家にも話を聞いた。
明星大学心理学部の藤井靖教授は、公認心理師・臨床心理士と日本能力開発推進協会の資格の違いについて、「資格を取るまでのプロセスと、取得してからの研鑽や自身の専門的な活動の振り返り」と挙げた。
公認心理師の場合、資格にかかる6年で心理学の基礎から体系的に学ぶほか、実習が必要になる。「臨床実習として、実際の患者や相談者の方に対して、指導を受けながら対応するというプロセスを数百時間こなします。資格を取る前の見習いとして、さまざまな経験や指導を受けながら自分の技術も高めていって、初めて受験資格が得られるわけです」。
さらに、学習期間は知識や経験を得るだけでなく、カウンセラーとしての適性を考える時間でもあるという。
「人間の心というのは本当に難しいので、学びの質も大事ですが、時間や量が大事なこともあります。カウンセラーとして人に向き合うということは、自分と向き合うことでもあります。自分が向いているのか、この仕事に耐えられるのか、そういうことを考えていくにはそれなりの時間が必要です。また指導者である教員から、適性についてアドバイスを受けることもできます」
資格取得の後も、研鑽が必要だ。臨床心理士の場合、5年に1回の更新制をとっており、その間に研修やベテランの心理士の指導を受ける必要があるという。公認心理師について定めている公認心理師法も、研鑽を積み、技術を高める必要があるとの理念に基づいた法律だと説明する。
「言ってみれば一生勉強です。それは単純に自分なりになんとなく経験していくことに止まらず、例えば学会に参加したり職能団体の研修会に出たり、ベテランの人からの指導を受けたり、自分の専門的活動の水準を常に最良に保てるように、知識と技術を積み上げていくという資格取得後のプロセスも重要視されています」
一方で、短期で取得できる資格は、取得後の研鑽は個人に一任されていることが多く、「資格としてのサービスの品質性において、一定の高い水準を保つということは、仕組み上難しいのかなという気がします」と見解を述べた。