観客自身が「楽しいイベントを作り、そこに参加した」
さらに濱田教授は、今回の彼らの宣伝方法について「共創マーケティングの代表的な成功事例と考えていいように思う」と見解を示す。
濱田教授によると、最近のフェスやライブの大部分が、開催週になってやっとチケットが売れていくという。それに対して岡崎さんの場合は、比較的早い段階でSNSでの懸命な告知を開始したとし、「個人アーティストとはいえ、またずいぶん早く白旗を揚げたな(笑)、と思いました」と所感を語った。
もっとも、「このように初期からマーケティング主体と消費者が商品開発にあたっていくのは、一般商品・サービスでは、『共創マーケティング』と呼ばれる手法にあてはまります。エンターテインメントは、オーディションやファン企画のライブなどを行うこともあり、共創とは相性がいいです」と説明する。
「共創マーケティングはうまくいった事例ばかりではなく、そう簡単に顧客を巻き込むことはできません。エンタメの世界は共創マーケティングと相性がいいとはいえ、ここまで巻き込めるというのは(岡崎さんやヤバイTシャツ屋さんの)アーティストスタイルの現れであり、それが成功の一番の要因だと思います」
たしかに、ライブ後、SNSには「楽しかった」「最高だった」などの感想がSNSでは多数書き込まれた。
濱田教授は、岡崎さんやヤバイTシャツ屋さんに「巻き込まれた」観客は、アーティストに楽しませてもらうことはもちろん、観客自身が「楽しいイベントを作り、そこに参加したのだと思います」という。それゆえ、「満足感がとても高かったのではないでしょうか。愛される人が、愛される人だけしかできない方法でライブを成功させた、ということかと思います」と指摘する。