Xのインプレッション数(閲覧数)を稼ぐため、注目されている投稿に無意味な返信をしたり、その投稿と同じ文章を投稿したりする、いわゆる「インプレゾンビ」――。その動向に変化が起きている。インプレゾンビの多くは海外ユーザーだが、2024年5月13日頃から、自国の食べ物や風景の画像を投稿するようになったのだ。
J-CASTニュースはいわゆる「インプレゾンビ」アカウントの2人に話を聞いた。
中東の「インプレゾンビ」への呼びかけが発端
きっかけは、あるXユーザーが、中東の国々にいる「インプレゾンビ」に向けて地元の料理や自身の日本語学習の進捗を投稿してはどうかと呼びかけたことだ。
Xでは23年7月からクリエイターに向け、インプレッション数に応じた広告収入の分配を開始した。これにより、いわゆる「インプレゾンビ」が急増。注目を集めた投稿には、内容と関係のない不自然な日本語のリプライが続々と並ぶようになった。能登半島地震の際には、偽の救助要請や被災地の状況として別の場所の写真が投稿されるなど、偽・誤情報の温床にもなった。
この呼びかけは、偽・誤情報拡散のような迷惑行為でなく、日本人も異国文化を知ることができるような情報でインプレッション数を集めてはどうか――といった意図の提案のようだ。
これに、実際に中東地域のXユーザーたちが反応し、提案を実行。異国の料理や風景の画像は日本人から注目を集め、インプレッション数を稼ぎたい彼らとWin-Winの状況に。この現象はX上で注目を集めた。
「日本の人々が私の投稿を気に入ってくれて本当に嬉しい」
この投稿に、あるXユーザーは在住するナイジェリア・ラゴスの街並みを投稿した。5月16日時点で7.6万の「いいね」が付き、1万回リポスト(拡散)されている。日本語で「素敵な景色をありがとうございます」「こういうのすごく好き!」といった感想が寄せられている。
以前は、サッカー関連の投稿をするほか、インプレッション数の高い日本語や英語の投稿に意味のない返信をしていた。しかし、ラゴスの街並みを投稿して以来、ナイジェリアの屋台料理や「お気に入りの夜のスポットの 1 つです」として駅のホームの写真を投稿。日本ユーザーから寄せられた質問に答え、交流を楽しんでいる様子だ。
このXユーザーはJ-CASTニュースの取材に、29歳で、普段は電気機器を製造する会社の顧客対応・マーケティング部門で働いていると答えた。自身の投稿が日本ユーザーからの注目を集めたことについて、
「私はインプレッション数を得ようとするのと同じくらい、自分の国のことを外の世界に共有したいと思っています。私は大のアニメファンなので、いつも日本に魅了されてきました。日本の人々が私の投稿を気に入ってくれて本当に嬉しいです」
などと英語で喜びを伝えた。
収益化は「自分の国や文化についてもっと共有するため」とは言うものの......
もう一人、ナイジェリアに住んでいるというXユーザーに話を聞いた。発端の呼びかけに反応して14日に投稿したナイジェリアの伝統料理「トゥウォ」の写真は、16日時点で12万の「いいね」が付き、1万6000回リポストされている。
このXユーザーも、寄せられた日本ユーザーからのコメントに積極的に反応し、交流を楽しんでいる様子だ。日本語で「親愛なる日本の友人の皆さん、ナイジェリアのハウサ族について何か知りたいですか?もし彼らについて知りたいことがあれば、お気軽に私に聞いてください」と呼びかけているほか、「また週末にナイジェリアについて何か投稿したい。 何にしますか?」と自国文化を伝える意欲を見せている。
このXユーザーは、28歳の農家で、学生でもあるとしている。
何のためにXの収益化プログラムを利用しているかを尋ねると、「自分の国や文化についてもっと共有するために(収益を)使用したい」と英語で回答。発端の投稿に反応した理由を、「私はナイジェリアの文化を世界の人々に共有したいと思っており、日本人に自分の国や文化を伝え、また彼らの文化についてもっと学ぶ良い機会だと感じました」と明かした。
投稿が注目を集めていることについて、「皆さんが私の地元の食べ物について驚くような反応をし、いつかそれを食べてみたいと言ってくれているのが、とてもうれしいです。ただただ素晴らしい」と喜びをあらわにした。これからも時々、地元の情報を投稿したいという。
一方で、今後も注目を集めている投稿に返信する形でインプレッション数を集めたいと思うかを尋ねると、苦笑いの絵文字を付けて「はい、そう思います」と回答した。