退職したいと伝えると、陰陽師代120万円請求された――。依頼者の代わりに退職手続きを進める「退職代行サービス」利用者のエピソードに、SNSを中心に驚きの声が相次いだ。
話題になったのは、ネットメディア「All About ニュース」が「退職代行モームリ」に取材した記事の一部箇所だ。依頼主は陰陽師代をどのような経緯で請求されたのか。同サービスを運営するアルバトロス代表・谷本慎二さんに聞いた。
「メンタルが落ちているのは呪われているのだろう」
退職代行モームリは、弁護士監修のもと業務を行っている。労働組合と提携しており、依頼者の代わりに会社と交渉する。依頼主が正社員や契約社員、派遣社員なら2万2000円、パートやアルバイトは1万2000円でサービスを利用できる。
前出の記事は2024年5月11日に報じられた。谷本さんは、依頼者から今回のエピソードを聞いた時は耳を疑ったとJ-CASTニュースBizの取材に明かす。「最初は信じられなかったのですが、詳細な話を聞いて本当だったんだと驚きました」。
具体的な経緯はこうだ。中小企業の制作会社に勤める40代の男性Aさんは、過酷な労働環境だったという理由で「退職したい」と社長に伝えた。だが、社長から「メンタルが落ちているのは呪われているのだろう。知り合いに陰陽師がいるから、おはらいをしてもらった方がいい」と言われたそうだ。
無理やり陰陽師を紹介され、実際におはらいを受けたAさん。その後も過酷な状況が続いたため、再度「退職したい」と社長に伝えた。だが、「もし退職するなら陰陽師代120万円を払わないと辞められない」と、拒否されたという。
谷本さんは、社長の言動についてこう話す。「呪われているから陰陽師を紹介するという社長の発言は、実際に陰陽師を紹介しているわけなので、恐らく冗談ではなく本気で言っていると思います」
その後、Aさんは退職代行モームリを利用した。陰陽師代を支払うことなく、退職できたという。
本当の理由が集まりやすい傾向
谷本さんでも驚くような退職理由は、今回のエピソードだけではない。ペットの美容院「ペットサロン」で動物を蹴ったりする先輩、手袋を変えずに施術を毎回行う歯科医、といった存在を理由に、それぞれの職場を辞めるため退職代行サービスを利用する人もいた。
谷本さんは、「会社には退職理由を絶対言えないですよね。なので、退職代行サービスには本当の理由が集まりやすい傾向があると思います」と指摘している。