外で働くこと、家事育児に頑張ること...ともに「活躍」
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――既婚女性の正社員経験平均年数は、子どもがいない人は11.6年ですが、子どもがいると7.4年とグッと減ります。子どもができると、さらに正社員でいることが難しくなる一番大きな理由は何だと思いますか。
川上敬太郎さん 正社員と呼ばれる働き方は雇用が安定する反面、職場から強い束縛を受ける面があります。そのため、家庭まわりに「工数」がとられるほど正社員として働き続けることは難しくなり、退職や他の雇用形態への変更を余儀なくされやすくなります。
結婚すると夫との共同生活が始まり、女性は家事負担が増えます。「大人」である夫は基本的に自分一人でも生活していくことができますが、「子供」がかかわる育児の場合はそうはいきません。特に、生まれたばかりのころは昼夜問わず24時間付きっきりになったりします。
そのため必要となる「工数」は大きく跳ね上がります。さらに子どもが2人、3人となると、その分負担が増えて仕事から離れる期間なども長くなりがちですし、復職してもお子さんが小さいうちは正社員以外の働き方になりがちです。
――フリーコメントをみると、正社員を辞めることが不本意だった人が多い一方、「両立という考え方を捨てるべき」と、正社員を辞めることを肯定する意見も一定数存在します。こういう意見はどう思いますか。
川上敬太郎さん 職業キャリアを発展させていくのであれば、正社員として働き続けたほうが、希望に近い経験やスキルを身につけやすくなります。その場合、お子さんが生まれた後はできるだけ早い段階で保育園に預けるなどして職場復帰するという選択になると思います。
一方で、お子さんが生まれたら、お子さんとの貴重な時間を優先して育児に専念したいと考える人もいます。これらの考え方は人によって異なりますが、どちらか一方が正しいということはありません。どちらも尊重されるべきものなのだと思います。
――川上さんが、フリーコメントで一番心に響いたものはどれですか。私は「夫婦お互いの思いやりがあっての、お互いの仕事、キャリア。他人や国に頼る前に、まずは家族の話し合い」でした。
川上敬太郎さん どのコメントも心に響くものばかりですが、「子どもにどこまで時間や労力をかけるか次第でもある」という言葉は印象的でした。
家事も同じですが、どこまで手をかけるかで費やす時間も労力も変わってきます。そして、どこまで時間や労力を費やせばよいのかに、決められた正解はありません。
家事も育児も仕事も、どれかに専念しても、両立させるのであっても、取り組み方は人それぞれです。どのように取り組んでも一所懸命な姿は尊いものです。
よく「女性活躍」という言葉が使われますが、外に出て働くことも、家事や育児にがんばることも、いずれも「活躍」に違いありません。それが、ともすると「活躍=外で働くこと」と限定的な図式で受けとられてしまいがちなので、注意が必要だと感じます。