「胸が詰まって何も言えなかった」早期離職した部下と10年ぶり再会 新米上司時代の苦い経験こそ「成長の糧」

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「小さなキャリアの階段」を作り、部下自らの経験を大切に

   そのためには、部下のための「小さなキャリアの階段」を作り、一歩ずつ自分で踏みしめながら上らせることです。

   Y君の場合であれば、まず、我々の顧客は一体誰であり、ニーズは何かを問いかけ、自ら言語化させること。そして、そのニーズを満たすにはどんな営業企画が相応しいかを、じっくり考えさせることです。

   また、部下の提案に対し、上司が頭からダメ出しをするのではなく、失敗が許される範囲で実行させてみることも大事でしょう。

   その結果、顧客のシビアな反応や評価から、本人に学ばせるのです。そうした試行錯誤と気づきが得られる、余裕ある環境を与えることも大切なのです。

   さらに、Y君がAさんとの再会時に述べた言葉から気づかされるのは、部下のためを思っての真剣な叱責やアドバイスは、時がくれば通じる場合があるということです。「親になって初めて分かる親心」とも言えるでしょう。

   当時のAさんが、チームの業績を上げるには、覚束ないYさんに教えるより、Aさん自身やベテラン部下が稼働するほうが早いはず。でも、あえてYさんを育てるために時間を費やしてくれた有難さが分かったのです。

   また、「顧客本位の仕事をせよ」とのうるさいほどのアドバイスの意味も、長年の営業現場と営業パーソンを育てる苦労を経験してみて、初めて身に沁みたことでしょう。

   ローマは一日にしてならず。部下育成の成果や喜びは、部下と過ごす貴重な時間の中で、また長い上司人生の中で、じっくりと獲得できるものと心得ましょう。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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