「どうして?」目をかけていた期待の若手部下が退職 後悔する新米上司...そのやり方、熱意は正しかったのか

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やがて退職してしまったY君

   そうこうするうちに、Aさんが気にしていたY君の社内評価はますますシビアになっていきました。

   新人とはいえ第二新卒のため、早期の戦力化が求められます。3か月や半年の節目に営業成績や今後の可能性が問われますが、その点でも振るいません。

「これは、もっと本腰を入れて鍛えないと...一人前にするには、まだ程遠いな...」

   Aさんは焦る気持ちを抑えながら、さらに根気よく、Y君と向き合う時間をとり続けました。

   しかし、入社から1年半後に、Y君は自己都合で退職してしまいました。

   理由は「次のキャリアに向けて」ということでしたが、上司や会社から認められないことへの失望があったことは否めません。

   Aさんはひどく落ち込みました。自分の育成ミスに違いないと思いました。ただ、何とか一人前に育てたいという自分の気持ちが、Y君に伝わらなかったことが悔しくて仕方ありませんでした。

   志望した会社の営業職に就き、やる気と希望に胸を膨らませていた彼を、短期間で落胆させ、自信を喪失させてしまったと、Aさんは自分を責めました。すまない気持ちでいっぱいでした。

   ですが、しばらくして、Aさんは気づきました。

   営業成果を求める上層部からの重圧の中、管理職として気持ちばかりが焦り、Y君の気持ちや得手不得手をしっかり受け止められず、彼ならではの成長の道筋を作ってやれなかったのだ、と。

   単に自分のやり方を押し付けたに過ぎなかったとも。しかし、もう遅いのです。

   唯一の救いは、Y君がその後の転職先で、それなりに頑張っていると風の便りに聞いたことでした。

   このエピソードは5月15日公開の<「胸が詰まって何も言えなかった」早期離職した部下と10年ぶり再会 新米上司時代の苦い経験こそ「成長の糧」>に続きます。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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