東急東横線「Q SEAT」不人気は理由がある 導入1年足らずで車両減、大井町線との大きな違い

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   東急電鉄では、大井町線で導入された「Q SEAT」のサービスを、他路線にも展開しようとし、2023年8月から東横線の一部列車の4、5号車でも開始するようになった。

   どうやらこのサービスが、人気がなく、方向転換を必要とする状況となっている。

   24年5月7日から、「Q SEAT」のサービス内容を変更することになった。サービスを提供する列車をこれまでの5本から7本に増やすいっぽうで、適用する車両を2両から1両に減らした。5号車だけになったのだ。

   そもそもこのサービスは、どのようなものなのか?

  • 東急東横線の「Q SEAT」
    東急東横線の「Q SEAT」
  • 「Q SEAT」は5号車だけに
    「Q SEAT」は5号車だけに
  • 東急東横線
    東急東横線
  • 4号車は通常車両として使われていた
    4号車は通常車両として使われていた
  • 東急線の車両
    東急線の車両
  • 東急東横線の「Q SEAT」
  • 「Q SEAT」は5号車だけに
  • 東急東横線
  • 4号車は通常車両として使われていた
  • 東急線の車両

田園都市線方面への着席サービスとして設けられた

   「Q SEAT」は、2018年12月に大井町線での急行列車の3号車に組み込まれ、サービスが開始された。なお全体で7両編成となっている。ふだんは、一般的な通勤電車の座席として、窓を背にして座るようにしていたものを、「Q SEAT」として運用するときだけは、進行方向を向くようにして座れる。

   なぜ大井町線で実施されたかというと、大井町線から田園都市線に乗り入れることができ、比較的長距離の着席サービスを提供するためである。

   田園都市線はもちろん、東京メトロ半蔵門線と直通運転しており、ここを利用する通勤客は多いものの、けっこう混雑している。帰りの時間帯くらい着席できるようなサービスを提供したい、ということで大井町線から田園都市線に乗り入れる形でこの試みを始めた。

   東急電鉄の大井町駅は、改札とホームが同一フロアの頭端式ホームで、改札を通りホームに向かって電車に乗る。この形のホームだと、始発駅時点では改札に近い車両は混雑し、遠く離れた車両は混雑しないということになる。

   大井町線での「Q SEAT」は3号車に設けられ、始発駅の改札から近すぎず遠すぎず、というところがあった。

   このサービスをほかの路線にも広げたい、やるからには東急電鉄のメイン路線である東横線に導入する、ということで東横線にも「Q SEAT」が導入されることになった。

前後の車両が混雑する

   東横線の「Q SEAT」は、10両編成の中の2両を指定席に、と気前のいいサービスを提供することになった。5本の渋谷始発急行列車に「Q SEAT」を2両連結し、渋谷~横浜間はどの駅でも指定席を購入すれば利用できるスタイルにした。前述した通り、開始は2023年8月。

   ただ、利用者は少なかった。

   座席指定料金500円を半額の250円にしたり、ドリンクを配布してみたりと、いろいろとやってみた。

   だが開始から1年もたたないうちに、内容を見直すことになった。

   本数こそ5本から7本に増やすものの、指定席車両は2両から1両に。もっと早い時間帯でも確実に座って帰りたいという声があったとも考えられるものの、2両では過剰だったともいえる。「Q SEAT」を利用する人以外からは評判が悪かったのでは、ということも考えられる。

   座席指定車両は、4号車と5号車。鉄道は、先頭車両や最後尾の車両よりも、中心部の車両のほうが混雑する。また、東横線は頭端式のホームは現在ではなく、いずれも中間駅の構造になっており、改札階とホーム階が別になっていることが多く、だいたい4号車や5号車のあたりに階段やエスカレーターがあることが多い。

   ホーム階にまでやってきて、目の前に来たのは指定券が必要な「Q SEAT」だったら? いい反応は得られないのではないだろうか。

   しかも、場所がよすぎる中間車両を「Q SEAT」にしているため、前後の車両が混雑する。

大井町線と東横線、環境や条件の違い

   大井町線は、現在は田園都市線に向かうメインルートではない。渋谷で東京メトロ半蔵門線と直通している本線のほうが、メインのルートである。しかも大井町駅は、頭端式ホームで「Q SEAT」が改札から距離がある。

   いっぽう東横線は、渋谷から横浜に向かう東急電鉄のメインルートである。利用者の多い渋谷駅でさえ、東京メトロ副都心線との直通運転を前提とした島式ホームであり、さらには改札階に行きやすい階段やエスカレーターがあるところの車両が混雑しやすいことになっている。

   さらに東横線は、それほど長距離の路線ではない。渋谷から横浜まで24.2km。駅間距離も長く、速達性が高い路線である。大井町線(と田園都市線)で大井町から長津田までは26.6kmと、こっちのほうが長距離である。

   また全駅で乗降が可能というのも、大井町線「Q SEAT」が乗降駅を分けているのと対比すると、乗客の快適性の面で難がある。

   座席指定サービスの車両を減らすということは残念なものの、本数を増やすことで再起していただきたい。東横線の路線条件を考えれば、決して悪いサービスではないはずだ。(小林拓矢)


筆者プロフィール

こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。

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