一人あたり20~30万円の還元が可能
こうした点を踏まえ、筆者は、「円安上等。1ドル300円なら、成長率20%。一人あたり250万円。儲けを隠すのは財務省」と、5月4日放送の「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(ABCテレビ)で主張した。
その際、日本の外貨準備対GDP比が先進国は5%以下なのに、30%弱と突出して多いことを示した。これは為替介入のために保有すると説明されるが、変動相場制では為替介入は想定されず、しかも毎日世界で数百兆円程度の取引の中、介入の効果は一時的で限界があるので、先進国では外貨準備がほとんどない。であれば、今の円安を好機ととらえ、含み益を早く吐き出し、国民に還元するのがいい政策になる。今の時点であれば、含み益は数十兆円なので、一人あたり20~30万円の還元が可能だろう。
筆者はこうしたこともかつて安倍元首相に話したところ、「それはいいね」という返答だった。
「正義のミカタ」では、消費税を2年間ほどゼロにするのに匹敵すると説明した。
円安について、確かに輸入業者や海外旅行者にはマイナスになるが、日本全体としてみれば、そのマイナスを上回るプラスがあり、しかもプラスの最大の利益享受者が日本政府というわけだ。であれば、その利益を国民に還元すれば、円安なんて誰も文句を言わなくなるだろう。安倍政権だったら、間違いなくやっている政策だろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。