朝ラッシュ時でも列車種別は複数設けられる
京葉線では、緩急接続ができる駅が多くあり、かつては朝ラッシュ時にも複数の列車種別を走らせて利用者の便を図っていた。しかし、平準化などを理由に本数を削減し、かつ各駅停車のみの駅の利便性を向上させるとした。実際には大して増えていない。
私鉄では京葉線よりも列車密度が高い路線でも、朝ラッシュ時に優等列車と各駅停車を混在させ、遠距離客と近距離客の分離などに力を入れている。かつての京葉線も同様のことをやってきたのだ。
ダイヤを「退化」させたことに対して、反発があるのは当然だろう。
乗務員などの人手が足りない、という問題があるのかもしれない。ならばそれを正直に言えばいい。
今回のアンケートは、統計学的・社会調査法的には正確さを満たさない調査であると考えられる。ただ、調査対象者を適切にランダムサンプリングすることが難しい案件で、これ以上のことはできないのが現実だったのではないだろうか。それは、JR東日本千葉支社が京葉線の現状を改善しない材料になるかもしれない。
「声なき声」という言葉がある。1960年5月に岸信介首相は、60年安保闘争の中で反対運動に参加しない多くの人を指してこのように言った。
JR東日本千葉支社は、京葉線ダイヤ改正に対しての異議申し立てをしない多くの人を「声なき声」と考え、このまま改善しないということもありうるのだ。
社会を変えるには、「声を上げる」ことが大事だ。JR東日本千葉支社は、ダイヤ改正で困ったことになった人や地域の声に耳を傾けるべきである。いっぽう、地域の人たちも声を上げ続けてほしい。「声なき声」とは言わせないだけの存在感を示すことで、変えられることもある。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。