新しく始まった就活生「キャリア形成支援プログラム」、3月の参加率87% どう活用すべき?就職みらい研究所長が解説

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   2025年卒就活生(現大学4年生)から始まった、新しい「キャリア形成支援プログラム制度」。

   2024年3月時点で約87%の就活生が、企業のプログラムに参加していることが、リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」が2024年4月26日に発表した「【2025年卒 就職活動TOPIC】インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムの参加状況(3月時点)」でわかった。

   現在大学3年生の「2026年卒就活生」は、このプログラムをどう活用すればよいのか。就職みらい研究所の栗田貴祥所長に話を聞いた。

  • プログラムを通じてプレゼンの練習にも
    プログラムを通じてプレゼンの練習にも
  • 栗田貴祥さん(本人提供)
    栗田貴祥さん(本人提供)
  • プログラムを通じてプレゼンの練習にも
  • 栗田貴祥さん(本人提供)

企業が選考に活用するタイプも

   このプログラムは、正式には「インターンシップ等のキャリア形成支援プログラム」という。政府と経済界の合意によって、2025年卒の就職活動から「インターンシップ」の定義を次の4つに類型化した【図表1】。

(図表1)キャリア形成支援プログラムに係わる取り組みの4類型(就職みらい研究所作成)
(図表1)キャリア形成支援プログラムに係わる取り組みの4類型(就職みらい研究所作成)
【「インターンシップ」と称さない】
「タイプ1」オープン・カンパニー:就業体験なし。個社や業界に関する情報提供・PR。実施日数は単日(半日程度)。
「タイプ2」キャリア教育:就業体験は任意。働くことの理解を深めるための教育。実施日数はプログラムによって異なる。
【「インターンシップ」と称して実施】
「タイプ3」汎用的能力&専門活用型インターンシップ:就業体験必須。実施日数は汎用的能力が5日間以上、実施期間の半分以上を就業体験。
「タイプ4」高度専門型インターンシップ:修士課程・博士課程の大学院生が対象。実施日数はジョブ型研究が2か月以上。

   このうち、タイプ1~2では、企業は取得した学生の情報を選考に活用できないが、タイプ3~4では活用できる。

   学生にとっては、インターンシップがどこまで採用の参考にされるかがあいまいで、不安のもとだったが、明確に線引きされ、自分のキャリア教育に打ち込めることになった。

◆プログラムに参加した目的、「業種理解」「仕事理解」で7割以上

   就職みらい研究所の調査(2024年3月18日~3月22日)は、2025年卒業予定の大学生(675人)と大学院生(297人)の合計972人が対象だ。

   2024年3月時点でプログラムに応募した大学生は86.0%、またプログラムに参加した学生は84.7%だった【図表2】。応募した学生のほとんどがプログラムに参加しており、関心の高さががうかがえる。

(図表2)インターンシップ等キャリア形成支援プログラムの参加割合(就職みらい研究所作成)
(図表2)インターンシップ等キャリア形成支援プログラムの参加割合(就職みらい研究所作成)

   プログラムの期間別の参加状況(経験割合)を見ると、「タイプ1」に当たる「半日」の割合が最も高く68.2%、次いで「タイプ1~2」の「1日」が56.3%。「タイプ3」以上の「5日以上」は20.6%だった【図表3】。

(図表3)インターンシップ等キャリア形成支援プログラム期間別参加状況(就職みらい研究所作成)
(図表3)インターンシップ等キャリア形成支援プログラム期間別参加状況(就職みらい研究所作成)

   また、プログラムに参加した目的を聞くと(複数回答)、「業種理解」と「仕事理解」が7割を超え、次いで「企業・各種団体等の事業内容理解」と「企業・各種団体等の職場の雰囲気を知る」が4割を超えた。

   まずは、将来働く企業・業界の仕事内容と雰囲気を知ろうという学生が大半を占めた。

「自己分析」と「自己PR動画作成」に苦労した

   ところで、プログラムに参加するためには、事前選考(書類や面接など)を通過しなければならない。

   調査では「回答が難しかった質問内容」を聞くと、「自己PR」や「応募理由」「大学での学修内容」を挙げる学生が多かった。具体的なフリーコメントをみると、こんな意見が寄せられた。

【自己PR】
「自己PRや学生時代に取り組んだ事など。インターンに参加するために、このようなものを準備する必要があると考えていなかったため、苦戦した」(理系男性)
「自己PRについて。まだ自己分析ができていない状態だったため、アピールしたい部分が明確になっておらず、回答しづらかったです」(文系女性)
【応募理由】
「インターンシップに期待すること、インターンシップを経てどうなりたいか。インターンシップの概要がそこまで知らされていない状態で答えるのが難しかった」(文系女性)
「志望理由を書くのが難しかった。インターンシップに応募した夏の時点では、業界や企業についての知識が全くなく、とりあえずさまざまな業界を見てみようと、あえて興味のない業界に応募したため」(文系女性)
【大学での学修内容】
「大学の専攻科目の将来性について、深掘りされた時が困りました」(文系女性)
「大学3年のため研究が始まっておらず、研究概要を聞かれた際に、興味のある学問を記載するだけでは内容が充実しなかったため、苦労した」(理系女性)

新インターンシップは、その職場や仕事を「深く知る」

   J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった「就職みらい研究所」の栗田貴祥所長に話を聞いた。

――今年(2024年)3月時点で、プログラムに参加した学生は84.7%、平均参加社数は8.72社です。初めての制度の数字ですが、どう評価しますか。予想より多いでしょうか。少ないでしょうか。

栗田貴祥さん 多くの学生が就職活動の準備段階として、企業研究や業界研究などのために参加していると感じております。

―― 一方、プログラム期間別の参加割合は「1日以下」が87.1%と大半を占めました。この数字はどう評価しますか。
個人的には「1日以下」では従来の「会社説明会」と内容が違わず、せっかくの新しいプログラムの意味がないような気がしますが。

栗田貴祥さん 2025年卒学生を対象にしたインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムについては、従来までのインターンシップとは大きく定義や考え方が変わりました。

期間要件や指導要件など、一定の要件が定められたインターンシップは、その職場や仕事を「深く知る」という観点で大きな意味を持ちます。また、期間の短いプログラムであっても、世の中にどんな仕事や会社があるのか、「広く知る」という観点で意味があるものになり得ると思います。

――学生に対する「参加目的」の問いでは、「業種理解」と「仕事理解」が7割以上を占めますが、やはり学生にとってまずは仕事を理解することが先決ということでしょうか。

栗田貴祥さん 大半の学生がプログラムへの参加から、就職活動の準備を始めることになると思いますので、まずは、社会にはどんな仕事や業種があるのかを知りたいと考える学生が多くなっていると思われます。

将来こうありたいという自分の姿を想定する

――プログラム参加のための「事前選考」も学生に立ちはだかる難問です。フリーコメントをみると、「自己分析が難しい」「企業研究ができていない」「まだ研究内容も決まっていない」とか、さらに「1分間の動画をつくるのが難しい」という声が多数寄せられています。
自己分析の方法や、動画の作り方のポイントなど、参加のための準備のアドバイスをお願います。

栗田貴祥さん 自己分析では、まず自分自身に主観的に向き合い、自分が大事にしたい価値観や、将来はこうありたいなという姿などを想定してみてください。

そのうえで大切なのは、自分を客観的に見てくれる他者の存在になります。家族や友人、大学の先生や社会人の先輩と対話しながら、自分だけでは気づけなかった強みや、自分らしさを知ることで、自己理解は一層深まっていくと思います。

動画制作に関しても、自己分析の結果を基に、企業から問われている課題に対し、自分の言葉で話せるよう練習をしてみてください。動画撮影の方法などが不安という方は、ぜひ、大学に設置されているキャリアセンターに相談してみて下さい。いろいろとアドバイスがもらえると思います。

――今回の調査をふまえ、これから就活にのぞむ「2026年卒の就活生」にアドバイスをお願いします。特に、プログラムにどういう心構えで取り組んだらよいでしょうか。

栗田貴祥さん プログラムに参加することで、新しい気づきや発見を得ることができることもあります。

ご自身の就職活動準備状況を踏まえ、自分が何を明らかにしたいのか、目的を明確にし、その目的に応じてプログラムをどのように活用するかを検討してみてください。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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