「重く受け止めています」――。このフレーズは、企業や政治家の記者会見の場でよく使われる。直近では、岸田文雄首相がこう口にした。衆議院補欠選挙の投開票が2024年4月28日に行われ、自民党が全敗したことに対するコメントだった。反省や謝罪の意を示しているようには聞こえる。だが、SNSでは「聞き飽きた」と苦言を呈する声が相次いだ。
ビジネス上のコミュニケーションでは、「重く受け止める」という表現はどう「受け止め」られるのか。
軽い印象を相手に与える可能性
「重く受け止める」と聞くと、その場をやり過ごすための言葉だと捉える人も少なくない。
企業向けのコミュニケーション研修を行うOffice Tの代表で、ビジネスマナーに詳しい金森たかこ氏に聞いた。「重く受け止める」という常套句を使う場合は、注意が必要だと指摘する。「誰もが使っている無難な言葉は、安易に使うと、気持ちがこもっていない、軽い印象を相手に与えてしまう可能性があるからです」。
金森氏によれば、このフレーズはビジネスで使っても問題ないが、「言い方」に配慮が必要だ。発するときの状況で、相手に与える印象が大きく変わる。
「(このフレーズを使う場合)このような事態になってしまい反省しているという思いをしっかりと相手に伝える、そして、その気持ちに合った態度や表情、身だしなみを整えることが大切だと考えます」
大切なのは「どうしていくか」
「~受け止める」には、真摯に受け止める、厳しく受け止める、厳粛に受け止める、真正面から受け止めるなど、さまざまな表現がある。「自分の思いを相手に伝えるときは、その時に感じた、または『決めた』ことを、自分の言葉で表現していくのがよい」と金森氏。
「受け止めて終わりではなく、受け止めた後どうしていくか、具体的に提示することも必要です。それによって、今後良くしていくために真剣に考えているということが相手に伝わっていくと感じるからです」