「DXでできることはもっとたくさんある」
Aさんの見方では、日本企業のDXは「流行ワードとしてはかなり広がり、一部で過去のものとされてはいるが、本格的な取り組みはようやく始まったばかり」ということだ。
「DXというと、日本ではいまだに基幹システムの刷新やデータプラットフォームの整備のことのように思われている節があります。そのようなシステムの入れ替えを行っても、ビジネスが変わらなければDXとは呼べないし、DXでできることはもっとたくさんあります。こんなところで『やったつもり』になるのは危うい」
現在、大手企業の多くは「事業ポートフォリオの変革」を経営戦略に掲げている。既存事業の成長性が頭打ちになり将来性が乏しくなる中で、当面は既存事業の生産性を上げて収益を確保しつつ、新規事業の開発を行うことが急務となっている。
しかし、新規事業の開発は簡単ではなく、まずはデジタル技術を活用した既存事業の革新から新たな事業のタネを見つけることが必要だという。
「たとえば、化学メーカーにおいてAIを使って新材料開発を高速化する取り組みは、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)と呼ばれています。DXの取り組みの典型のひとつですが、こういった取り組みを積極的に行っている会社が、今回の調査ランキングの上位に入っていないのが気になります」
Aさんは就活生に対し、企業におけるDXの取り組み度合いは就職先を選ぶ基準のひとつになりうると強調し、「単なるイメージだけでなく、具体的な取り組みについても十分情報収集をした方がいい」と助言する。