経験豊富な「ベテラン部下」が一目置く上司の条件は 殻に閉じこもらず...トレンドを学び続けていますか?

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   上司の言葉がけひとつで、モチベーションが高まった経験はありませんか?

   実際のエピソードや感動的なエピソードを取り上げ、人材育成支援FeelWorks代表の前川孝雄さんが「上司力」を発揮するヒントを解説していきます。

   今回は、ブライダルプランナーとして活躍する、30代のOさんの話です。

  • ブライダルプランナーの忘れられない「挫折経験」とは
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  • 「上司力」を発揮するヒントとは
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今では難しい仕事を卒なくこなしてくれる部下に感謝

   <猛クレームで担当を外され、すっかり自信を失った部下 上司が伝えた「周囲までよく見渡して」の真意>の続きです。

   Oさんは最初の挫折体験を経て、もともと努力家でしたが、この失敗を機に仕事への視野を広げ、さらに自己啓発に取り組み、先輩・上司への相談も積極的に行うようになりました。

   その後もいくつかの壁を乗り越えながら、成長していきました。そして今、若手中堅を束ねるリーダーとして、後輩から頼られる存在になっているのです。

   当初から見守ってきた課長のAさんは、現在のOさんについて、次のように述べています。

「今では、彼女に助けられているところが多々あります。結婚式は、新郎新婦も初めてのことなので、経験豊富なブライダルプランナーの担当がいいというリクエストもあります。若いスタッフは一生懸命やっているけれど、どうしても年配の親御さんとのやりとりは難しかったりして、結局は途中からベテランのOさんにアサインせざるを得ないことも多いんです」
「そもそも、結婚とは生活習慣も育ってきた環境も違う家同士が結びつく儀式。引き出物や演出など、両家の意見が微妙に食い違います。『相手方にこう伝えてほしい』という難しい仲介役を、ブライダルプランナーは任されることも多いのです。そのうえ、担当者と相性が合わず担当替えを要望されたお客様となれば、相当気を遣わざるをえません。Oさんには、いつもかなり難題を頼んでいますよ(笑)」

強い信頼関係が支えに

   さらにAさんは語ります。

「Oさんは、そうした難しい仕事を卒なくこなしてくれるので、感謝しています。とにかく、人の話を聞くのがうまいんです。いろいろなことを聞いて、その上で、こうしたらどうですかと提案する。お客様を安心させるオーラもあるので、いつも感心します」

   上司のAさんからは、部下であるOさんへの強い信頼感が伝わってきます。Oさんにもその思いは通じているようで、難しい仕事を振られることに対して、こう話します。

「誰に何を頼まれてもいい、というわけではないんです。でもAさんから任された仕事ならトライしようと思えるんです。Aさんを尊敬していますし、Aさんも私を信頼してくれていると感じています。時に厳しいことを言われても、いやに感じない。自分のために言ってくれていると分かるからです」

   上司と部下の強い信頼感。この信頼感があるから、難しい仕事を任されても、Oさんは頑張れているのです。

   では、この信頼感はどのように作られているのでしょうか。

部下の様子を常に気にかけ、心配なら声かけで確認

   Oさんはこう話しています。

「私は、仕事に少し行き詰った時にも、なるべく平静を装ってしまいます。チーム内ではもうベテランなので、困った雰囲気を出しにくいのです。でも、上司のAさんは、なぜかそういう時に限って、ちゃんと気づいて声をかけてくれます。『あ、ちゃんと見てくれているんだな』と感じることが、時々あります」

   2人が信頼関係で結ばれているのは、単に相性ではなく、上司のAさんが部下のOさんをしっかり見守り、かつ見守っていることを常にメッセージしていることが鍵のようです。

   Aさんの言葉からは、常日頃細やかにOさんの仕事ぶりを見て、Oさんの強みや良さをどう活かせるかを考えながら、仕事を振っていることが分かります。

   Aさんは管理職になってから、部下をよく見て、声をかけることを意識するようになったといいます。

「職場では、部下たちの様子がよく見える席に座っています。そうすると、電話のやりとりや表情とか話しかたで、何かがあると大体分かります。そして声をかけると、これまた大体当たるんですね(笑)」(Aさん)

   あくまでも、担当する仕事に取り組み、問題解決に向けて努力するのは部下の仕事です。

   ただ、その状態を見守り、良き相談相手となり、気持ちの揺れにも共感する。結果について最後は責任を取るのが上司の仕事です。

   AさんとOさんの間には、その関係がしっかり根付いているのです。

常にアンテナを立てて学び続ける「仕事をするプロ」としての後ろ姿

   Oさんは、上司のAさんについて次のようにも話しています。

「Aさんのことは、上司としてというより『仕事をするプロとして』尊敬しています。社外のお客様よりも、社内の上層部の顔色ばかり気にする『ヒラメ上司』的な中間管理職って、けっこういるじゃないですか。世の中のトレンドや、新しいものに全く興味がない人も。でも、Aさんは本当に物知りです。いま流行っている話題やグルメ情報でも、何でも。殻に閉じこもってないところは、お客様に提案するにも欠かせない姿勢だなって思っています」

   Oさんが上司のAさんを信頼している理由には、見守ってくれていることに加えて、時代の変化に応じ、敏感に学び続けるプロとしての敬意の念もあるようです。

「仕事で何か相談しても、きっと何かが返ってくる安心感があるんです。『ふーん、そういうのがあるんだ。知らないな』と言われてしまうと、もうそれ以上会話が続かない。でも、Aさんは違うんです」

   ブライダル業界はもちろんのこと、どんな業界・企業であっても、常に変わり続ける社会や時代と無縁ではいられません。

   現場を束ねる上司が流行や新しいものに無頓着では、お客様がより喜んでいただける提案はできないからです。

   上司には、どの部下よりも社外にアンテナを張り、未来に向けて学び続ける真摯さが求められるのです。

(紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。)



【筆者プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。
近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。

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