「キャ~、ゴキブリと目が合っちゃった!」
パニックになり、スマホで調べた「基本料金500円」の駆除業者を呼ぶと、なんと10数万円も取る「ゴキブリ業者」だった......。
こんな害虫・害獣駆除の相談が急増しているため、国民生活センターは2024年4月24日、「ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意」という警鐘を鳴らす報告リポートを発表した。
特に、10代~20代の若い世代に被害が集中している。ゴキブリから身を守るにはどうしたらよいか、担当者に聞いた。
ネズミ1.7倍、ハチ3.3倍なのに、ゴキブリ相談は16倍
国民生活センターによると、いわゆる「害虫・害獣駆除サービス(ペストコントロール)」(シロアリ駆除を除く)の相談が、2028年度の854件から2023年度は2290件へと年々増えている。
特に、10代~20代に限ると、2018年(35件)から2023年度(552件)には16倍に急増しているのが特徴だ【図表1】。
また、なかでもゴキブリ駆除の相談が際立って多く、同じ時期に14倍に増えている【図表2】。
ちなみに同時期、ネズミは1.7倍、コウモリは2.1倍、ハチは3.3倍だから、若い世代がいかにゴキブリを恐れているかがわかる。こんな事例が代表的だ。
【事例1】ゴキブリ駆除の中断を求めても聞き入れてもらえず、高額料金を請求された
深夜、ベッド周りにゴキブリが出た。ネットで調べると、「基本料金約500円、追加料金なし」と記載があるサイトがあったので電話したら、「基本料金は約5000円」と言われた。表示と違うので不審に思ったがそのまま駆除を依頼し、自宅に来てもらった。
作業が始まったが、その際「ゴキブリの卵もあった」「このまま放置すると増えるので徹底的にやったほうがいい」「総額約15万円になる」と言われ、どんどん作業を進められた。
あまりに高額なので、今はやらなくていいと断ったが、聞き入れてもらえなかった。やっと作業を止めたが「作業した分の料金は払ってもらう」と約7万円を請求された。(2023年9月・30歳代女性)
【事例2】ハチに刺されて死ぬと言われ駆除依頼したが、高額なので解約したい
自宅の庭で大きなスズメバチの巣を見つけ、駆除を依頼しようとネットを見ると、「24時間365日対応」「最短10分で到着」と表示しているサイトがあった。電話相談をすると、「今すぐにそちらに向かう」と言われた。
調査が行われた後、「このままではハチに刺されて死ぬ」「近所の人が刺されて死ぬと裁判になり、大変な費用がかかる」「今なら約150万円を約100万円にする」「はやく駆除したほうがよい」と言われ、その場で契約した。
作業は1日では終わらず、後日続きをしてもらうことになったが、冷静に考えると業者の話は不審なところがあり、契約金額も高すぎる気がしてきた。(2023年11月・50歳代女性)
平気でうそをつく「コウモリ業者」
【事例3】不安をあおられネズミ駆除を依頼したが、作業内容が不十分なので解約したい
自宅にネズミが出たので、ネットに「一軒家約5000円~」と記載があった業者に見積もりに来てもらった。「ネズミの侵入経路は見当たらないが、たくさんいるようだ」と説明され、ネズミ被害の動画を見せられた。料金はネットの表示価格と大きく違い約13万円と言われた。だが、動画を見せられ不安になっていたので契約した。
しかし、その後不審に思い、別業者にも来てもらうと、前の業者が入れないと言っていた部分も調査し、「ホームセンターで売っている粘着シートを数枚引いてあるだけで、約13万円は高額だ」と言われた。(2023年12月・50歳代女性)
【事例4】コウモリ駆除業者と契約したが、うそをつかれたので解約したい
庭にコウモリの糞らしいものがあり、ネットで探した業者に見積もりを依頼した。「駆除は約8000円から」と記載があった。相見積もりを取って検討するつもりだったが、来訪した業者に「今やらなければひどいことになる」と脅され、また「近所のコウモリ駆除もうちがやっている」と足場が設置された家を案内され信用した。
そして「近所の足場を撤去し、こちらに回すから安くなる」と、強引に勧められ約130万円の契約をした。その後、足場が組まれても近所の家に足場があったので、変に思い聞きに行くと、「コウモリ駆除業者など知らない」と言われた。(2023年9月・30歳代男性)
若い人はスマホ検索が得意、それが仇になった
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった国民生活センター相談情報部の樋口雄大さんの話を聞いた。
――ゴキブリ駆除の相談が非常に多いですね【図表2】。特に若い世代に目立ちますが、薬局やホームセンターに行けば、さまざまなゴキブリ駆除の用品が売っています。自分で簡単に退治できるのに、なぜいきなり業者を呼んでトラブルに巻き込まれるのでしょうか。
樋口雄大さん 若い人が部屋の中で突然、ゴキブリを見つけて恐ろしくなったり、パニックになったりする気持ちもわかります。10代~20代の人はいつもスマホを手に持っており、すぐに検索して調べることが得意です。
薬局やホームセンターに行って自分で何とかしようと考えるより先に、あわてて業者を探してしまうと思われます。事例にあるように、広告に出てきた「基本料金500円から」という宣伝文句を引かれ、すぐに電話してしまうのでしょう。その「500円」が「5000円」になり、あるいは「15万円」、「100万円」というトンデモない額になるわけです。
――10代~20代からの相談件数が2018年~2023年に16倍に急上昇しています。いったい、どういうわけでしょうか。コロナ禍で家にいる時間が長くなり、ゴキブリと遭遇する機会が増えたからでしょうか。
樋口雄大さん その可能性も考えられますが、それを示すデータはありません。あくまで推測になりますが、ムシ嫌いの若者が急増しているからだと思います。特に女性に多く、全体の相談件数の7割近くを女性が占めます。
10年くらい前でしたか、私も子どもの頃に愛用していたある学習ノートの表紙から、リアルな昆虫の写真が消え、植物中心の写真になったことがニュースになりました。ムシが苦手な子どもが増え、怖がるからだと報道されました。
同時にスマホが普及して即座に駆除業者を調べて、依頼することに慣れた若者が多くなったことがあげられます。
ゴキブリなんかに驚かず、冷静に複数の業者に電話を
――なるほど。業者側もそれを見込んで、あえて「500円」とか「700円」といった安い基本料金を広告でアピールするわけですね。悪質な業者の被害を防ぐために、一番大事な心構えはなんでしょうか。
樋口雄大さん 極端に安い価格を表示するサイトや広告には注意しましょう。特に3ケタ台の料金で済むことは絶対にありえません。
そして、複数の業者を呼んで相見積もりをとって比較・検討することが、何より大切です。1社だけを呼ぶと、事例にあるように「ゴキブリの卵があった。どんどん増える」とか「近所の人がハチに刺されて死ぬと、裁判になり大変な費用になる」などと脅され、その場で強引に契約を結ばされる羽目になります。
ゴキブリやネズミを見てビックリする気持ちはわかります。しかし、まずはひと呼吸置いて冷静になり、スマホで複数の業者に電話しましょう。ゴキブリやネズミが出たからといって、命に関わるような緊急事態ではないのですから。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)