AIビジネスで日本が米中に勝てない理由 中国人連続起業家を阻んだ「前例と規制」

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

出資は受けず自己資金で運営

   何さんは薬師丸賢太の事業化にあたって、「前回の神居秒算で犯した過ちを繰り返さずに、経営を軌道に乗せる」と目標を立てた。

   神居秒算は何さんが会社員だった時、中国人投資家に「出資するからぜひやるべきだ」と勧められて立ち上げた。2000万元(約4億2000万円)の出資を受け、まず中国の不動産市場でビジネスを始めた。

   投資家からは「赤字なんて気にしなくていい。金を焼き尽くしてシェアを取ってライバルを潰せ。どうやって儲けるかは生き残った後に考えろ」と言われ、広告費をつぎ込んだ結果、2か月で億単位の赤字が出た。途中で日本市場にターゲットを移したが、経営方針を巡って投資家との折衝に苦労したことから、薬師丸賢太は投資家のお金を入れていない。

   神居秒算の売却で手にした資金があるとはいえ、売り上げが立たなかった時期はコスト削減を徹底した。

「1回目の起業は最初から30人のチームをつくり、人件費だけで毎月1000万円出て行った。2回目は必要最低限の10人で始めた。上海のオフィスは新型コロナウイルスが流行したときに解約して全員在宅勤務に切り替えた」

   広告は出さず、「自分がある程度できるから」とマーケティング担当者も現在まで置いていない。一方、技術を伝えるためにウェブサイトや動画コンテンツはしっかり作り込み、少数精鋭の社員には高い給料を出した。

   処方箋のAI入力は、個人情報の壁や技術的難しさから参入のハードルが高い。開発を初めて1年半は売り上げゼロだったが、「しっかりとしたサービスをつくれば、宣伝しなくても顧客が広がっていく」と自信があった。

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