AIビジネスで日本が米中に勝てない理由 中国人連続起業家を阻んだ「前例と規制」

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容易に処方箋を集められない

   神居秒算の売却後、何さんは2020年秋にAIによる処方箋読み取り・レセコン入力技術の開発に着手した。薬剤師に「手入力が大変で、何とかならないか」と相談されたのがきっかけだった。

   病院が発行する処方箋は統一されたフォーマットがなく、医師や病院によって記入方法もさまざま。処方箋をレセコンに入力する作業は、人手不足に悩む薬局の負担になっていた。

   「私はAIによる物体認識の研究者だったし、神居秒算のほかにも複数のAIサービスを手掛けていたので、処方箋の読み取りなら開発できると自信があった」と何さん。

   だが、AIを訓練するために必要な処方箋データは、氏名、住所、病歴など「個人情報の塊」であることから、個人情報保護法などが壁となり収集が想像以上に難航した。

   薬局から容易に処方箋を集められないと分かると、何さんらは社員総出で病院に行きまくり、処方箋を手に入れた。

「歯科検診、めまい、視力が落ちた、花粉症......、少しでも悪いところを探して、週一ペースで受診した」

   処方箋のサンプルデータの提供に向け、調剤薬局との交渉も続けた。

「調剤薬局を展開する薬樹となの花薬局の協力を受け、店舗でのテストができるようになった。この2社の協力がなければ製品化には至らず、撤退していた」

   入力の精度が徐々に上がり、2022年1月に医療機関向けシステム大手のEMシステムズが自社のサービスに何さんが開発した技術を採用してくれた。その実績が信頼を向上させ、薬師丸賢太の売り上げは右肩上がりで増えていった。

   薬師丸賢太は薬剤師が処方箋をスキャナやスマホのアプリで読み取るだけで、必要な情報をレセコンに自動入力する。誤入力の報告率は直近でわずか0.19%だ。

   何さんは「AIが情報の解析を終えると画像データは自動で削除される。我々システム側の人間が処方箋の中身を確認することは一切ない」と説明した。

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