会社でどうでもいい仕事をこなしている(ようにみえる)おじさんは、なぜ存在するのか――。
そして、給料高いのはなぜなのか? 自分がどうでもいい仕事をせざるを得なくなったとき、どう取り組めばいいのか?
「あのようになりたくない」煙たい存在に思えてしまう
仕事をしていると「この人は何をしているのだろうか?」と存在に疑問を感じる同僚がいたりするものです。
とくに年配の同僚であったりすると、「あのようになりたくない」と煙たい存在に思えて仕方ない場合があります。
先日も、私が取材した広告代理店で若手社員から「どうでもいい仕事しているようにみえるおじさん」に対する不満の声を聞きました。
彼らが言うには、自分たちはクライアントに対して提案するため、日夜仕事に忙殺されている。お互いに忙しいけど、助け合って仕事をこなす日々だ。
ところが、職場でスローに動いている隣の部署にいるおじさんが目にとまり、イラっとすることがある。
そのおじさんのいる部署では、これまでに調査した業界動向とか統計分析を管理している。でも、具体的に何をしているのか? 所属しているおじさんが何人もいて、パソコンに向かっているけど、緊迫感なく画面を眺めているようにみえる。
おそらく、ネットで仕事と関係ない芸能情報でもみているに違いない。それで給与をもらっているなんて許せない......。
このように、妄想も含めて、大いに不満を抱いていました。
同じような気分の人は世の中にたくさんいるかもしれません。でも、なんでそんなおじさんが存在しているのでしょうか? 今回はどうでもいい仕事をしている人の存在意義について考えてみたいと思います。
会社の度量の大きさが社員にとって安心材料に
それは、会社の度量の大きさと言えるかもしれません。
多少、仕事ができない。それでも役に立てそうな職場を探して、あてがってくれる。過去には活躍して貢献してくれた時期があったので、それを考慮して、今の仕事ぶりに見合わない給与を払っていることを容認する。
こうした度量が、社員にとって安心の材料になっていると思っている気がします。
実際、このような度量のある会社で、経営者に、社員に対する処遇等のポリシーを尋ねると、家族主義とか人にやさしいと前向きに捉えて説明してくれます。
不満の温床になっているとは思っていないように感じます。さらにいえば、大企業の大半が度量の大きかったので当たり前と感じている人が、ミドル世代以上は多いかもしれません。
さきほどの会社で、中堅以上の社員に社風を聞くと「弊社は人にやさしい会社です」と自慢げに語ってくれました。あくまで、社員のため、よかれと感じているのです。
度量の大きさを維持することが困難な時代に
ところが、そのように捉えていない人がいることもまた事実です。
若手社員で多いように思いますが、理由は自分との給与格差が大きい点ではないでしょうか。
若手社員とどうでもいい仕事をしているおじさんで、おそらく給与が1.5倍以上はある。あきらかに自分は損していると感じるから、不満が大きくなる。しかも、自分はおじさんになったときには同じような恩恵はないように思える、と。
たしかに、どうでもいい仕事をしているおじさんがリストラされたり、給与が減らされることが行われる会社が増えてきました。
度量の大きさを維持することが困難な時代が迫ってきたと言えます。
それゆえ、どうでもいい仕事をしているようにみえるおじさんは貴重な既得権益者に思えて不満を増幅させることになっている気がします。年金問題に似ているかもしれません。
仮に、自分がおじさんになったときに給与はそれなりにもらえて、どうでもいい仕事をするとしたらどうか?
割り切って、それをありがたく受け入れる人は相当にいる気がします。不満を抱く背景には、自分は受けられない恩恵と感じていることをおさえておくべきでしょう。
自分が「楽しい」と感じられる行動を
ただ、自分がどうでもいいように思える仕事をする職場に配属されたら、どうしたらいいのか?
ミドル以上であれば、悠々自適に過ごそう!くらいに割り切ってもいい気がします。ただ、若手社員だとすれば、そうした職場が島流しのような閑職に思えるので落胆するかもしれません。
自分も同様の境遇になれば、ショックを受けるかもしれません。会社が自分に期待してくれない。将来は暗たんたるものに確定したと感じてしまうかもしれません。
ですが、ここは大いに楽しんで過ごせばいいと思います。楽しむとは、自分なりの工夫で仕事の楽しさを探すということです。
たとえば、前述した部署に配属されたら、そこで新規事業を立ち上げてしまう。あるいは、同僚と親睦を深める会合を企画する。自分が「楽しい」と感じられる行動をドンドン起こすのです。
注目度が低く、プレッシャーがないのはメリット
どうでもいいように思える仕事の集まった職場は、それだけ会社からの期待が低い。注目度が低く、プレッシャーがない。マネジメントも緩いので好き勝手にできたりするものです。
そうした状況を楽しむ仕掛けをやってみるのです。
すると、意外に楽しく、意義のある仕事が舞い込むようになったりします。仕事は楽しそうに振る舞う人に集まります。与えられた環境を前向きに捉えていくと、状況が逆転することはよくあります。
ちなみに古い話ですが、「島耕作」という漫画上の主人公は上司に嫌われ、どうでもいい仕事ばかりの職場に飛ばされたことが何回もありました。
ところが、その職場を楽しんで状況を変えていくことを行い、本社に戻されることになります。
与えられた環境を最大限に活かせる人は高い評価を得て、期待の高い仕事を任されるということを示しているように思います。
自分に与えられる仕事の環境は刻々と変わるので、一喜一憂せず、しっかりと取り組む=楽しむようにしていきましょう。
【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ):株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。