年功序列的な給与テーブルでは「経験者採用で相手にされない」
Aさんの会社が給与制度の抜本的な見直しを行った背景には、「優秀な人材が経験者採用できなくなった」ことがある。
これまでは新卒採用中心だったので、採りたい人から断られることはほぼなかった。しかし経験者採用では、外資系コンサルティング会社などと天秤に掛けられ、「やっぱり給与が全然違うので」と、ほとんど辞退されてしまう。
「年功序列的な給与テーブルを大事に抱えていると、たとえばデジタル人材など労働市場で奪い合いになっている専門人材に内定を出しても、まったく相手にされません。最初、経営陣は『なぜうちが負けるのか?』と不思議がっていましたが、基本的な考え方から改めないとダメだと気づいたのです」
なお、「高く売れるジョブ」とは、経営戦略の重点事業や重点課題に関わりの深い仕事だ。
「事業ポートフォリオの変革」のために、新規事業の開発に携わるか、既存事業であれば生産性の飛躍的向上を実現しなければならない。これまでの仕事を、これまでと同じやり方でコツコツとこなしていても評価されない。
Aさんは、完全な売り手市場となった新卒採用は、優秀な経験者採用と同じ感覚で行う必要があるだろうと指摘する。
「まずは『お前を入れてやる』ではなく『あなたに選んでいただく』に考えを改めること。そして、社員にとって『入ったら人生を丸抱えしてくれる会社』ではなく、『転職を念頭に置きながら魅力的なキャリアを積める会社』であろうとすること。言い換えると、『自分を高い売り物にしてくれる会社』ということ。給与と転職にこだわる新入社員の考え方は正しいと思います」