為替介入の逆張りに賭ける「ミセス・ワタナベ」たち
――熊野さんはリポート「強まる為替介入の警戒感~1ドル155円を突破、さらに進むのか~」(4月26日付)のなかで、「一方、(政府・日銀の)為替介入を待ち構えている人もいる」と指摘していますね。どういうことですか。
熊野英生さん それは、金融・証券用語で「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる人々のことです。「ミセス」と言っても、実際はほとんど男性です。外国為替証拠金取引(FX)などの取引を活発に行う日本の個人投資家たちの俗称です。日本人の主婦やサラリーマン投資家のことを、欧米の報道機関がそう名付けました。
この「ミセス・ワタナベ」の一部に、為替介入が行われる時、いったん円高に振れたタイミングで、逆に円売り・ドル買いを浴びせかけようという人たちがいます。介入の効果が限定的だという読み筋で、為替が再び円安に振れる可能性に賭ける投機的な思惑があります。
こういう逆張りの売買は、昔は機関投資家もやっていましたが、現在は対抗してもつぶされる経験を積んで懲りているのでやりません。しかし、最近は個人投資家の存在感が増しています
――ということは、「ミセス・ワタナベ」の一部が逆張りをしたら、政府・日銀の介入の効果も薄れてしまうということですか。
熊野英生さん 前回の介入(2022年9~10月の計3回)で、日本政府は総額9兆円を使いました。日本の個人投資家の資金は限られているので、たいしたことにはならないでしょうが、世界中に同じことをやる人がたくさん出てきたら、どうなるかわかりません。