円安が進行し、ついに1ドル=155円を超えた。2012年には1ドル=79円台をつけ、当時は「円高が日本経済を苦しめる」と言われていたが、昨今は逆に「日本は円安で貧しくなった」という話を聞くようになった。一体何が起きているのだろうか。
円金利を上げれば円高に戻せる可能性あるが
外国為替市場では、経済がより強い国の通貨が中長期的に強くなっていくというのが大原則だ。これは、利益の高い会社の株価が高くなる、あるいは能力の高い人の方が時給は高い、のと似た話である。
歴史を振り返ると、1970~80年代にかけて日本は急速に豊かになった。これは日本経済の競争力が増していったためだ。そのため1ドル360円だったのが200円、100円......と円高に進み、我々は世界中のモノを安く買えるようになった。日米の平均賃金を比較すると、1973年には日本の平均賃金は米国の6割程度であったが、1995年には何と米国の2.5倍にもなった。
しかしこのところの急速な円安は、日本人の購買力を減少させている。2024年2月には、日本の平均賃金は米国の0.57倍と、1970年頃の低い水準に戻ってしまった。(Jeff Weniger氏のデータによる)
昨今の急激な円安には、金利の動向が大きく影響している。為替レートの短期的な変動は外為トレーダーの思惑に左右されるが、彼らが基本的な指標として重視しているのが金利だからだ。金利が高くなればそこに資金が集まり、その通貨が高くなるはず、という理屈による。
このところ円安は急激に進んできているが、それはドル金利がこれから上昇していくという予想が市場で高まっているためだ。日本も対抗して、円金利を上げれば円高に戻せる可能性がある。しかし金利を上げると景気の悪化や国債の利払いの増加といった副作用が起きることも予想されるため、日銀にはそこに踏み込む勇気はないと市場に見透かされている。