若い世代には、いったいどんなSNSの人気が高いのだろうか。
NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年4月22日に発表した調査「10代のSNS:LINE9割、Instagram8割、TikTok6割、Threads2割:4年でTikTok利用率が増加」によると、10代では「TikTok」の利用率が約6割に達し、4年前より約3倍に急増した。
「TikTok」は個人情報漏洩と炎上のリスクが高いとされ、米国では禁止も検討されている。大丈夫だろうか。専門家に聞いた。
4年間で3倍、10代のTikTok利用者が急増中
モバイル社会研究所の調査(2024年1月)は、全国の15~79歳の男女6440人が対象だ。
代表的なSNSであるLINE、X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTok、そしてInstagramやFacebookで知られるMeta社が2023年7月にサービス提供を開始したThreads(スレッズ)の利用率(月に1回以上利用)を調べた。
その結果、LINE(84.9%)が最も多い。続いて、X(43.6%)、Instagram(42.1%)、Facebook(21.8%)、TikTok(18.0%)という結果になった。Threadsの利用率はまだ5%程度だった【図表1】。
ところが、これを年代別にみると、10代ではInstagram(78.7%)とX(72.9%)の利用率が非常に高いうえ、TikTok(55.0%)が6割近い高さだ。Threads(17.9%)も2割近くに達し、Facebook(13.4%)より多い【図表2】。
TikTokは若年層に人気がある。20代(33.7%)でも約3割が利用しており、昨年より12ポイント増加した。30代(22.3%)の利用率でも昨年よりも12ポイント増加しており、若年層に急速に広がっている。
【図表3】は、10代のTikTok利用率の推移だ。
2020年には2割程度(20.8%)だったのが、年々増加して2021年(31.1%)に約3割、2022年(39.3%)に約4割、2024年に約6割(55.0%)となった。10代を中心とした若年層にTikTokの利用が着実に広がっていることがわかる。
軽妙な音楽に合わせダンス、面白い動画を簡単に撮影
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったモバイル社会研究所の佐藤仁さんに話を聞いた。
――全般的な傾向をみて、過去の調査と比べて目立った変化がありますか。特にXはイーロン・マスク氏がTwitterを買収して以来、利用者が離れたと言われますが、調査でそういう傾向はみられましたか。
佐藤仁さん 全体的な傾向としては、LINE、X、Instagramは微増で大きな増加はありませんでした。Xの利用率は昨年(2023年)と同じように約4割でほぼ横ばいです。マスク氏の買収によって利用者が大きく離れたという結果は見受けませんでした。
Facebookは昨年よりも微減しており、10代ではThreadsのほうが利用率は高かったです。TikTokが年々、10代で増加しているのが顕著です。
――TikTokが10代には大人気で、驚異的な伸び率で広まっていますが、どういう魅力が若者をひきつけるのでしょうか。
佐藤仁さん 軽妙な音楽に合わせてダンスをしたり、面白い動画を簡単に撮影できたりするのが若年層に人気があるのだと思います。
日本だけでなく海外でもTikTokが若年層に人気があり、著名なタレントやインフルエンサーらもTikTokで配信しています。
Xのように文字を打つ必要がないこと、Instagramのように「映え」を意識しなくてもよいことが若年層に受け入れられているのではないでしょうか。
――なるほど。しかし、TikTokには「個人情報が特定されやすい」「情報の拡散力が高い」「炎上リスクが高い」といったリスクがあるとされていますが、こうした点については、10代が使うことに心配はないのでしょうか。
佐藤仁さん TikTokによらず、SNSを利用することには一定のリスクが伴います。SNSのリスクを理解し、個人情報などに気を付けながら利用する、ということができるようにしていく必要はあると考えます。
若者は、新しいサービスが出たらすぐ利用したがる
――TikTokには関しては、親会社が中国企業であり、情報が中国共産党に流れる危険があるとして、米国議会下院が2024年3月に「TikTok禁止法案」を可決しています。こうした点についての危惧はないのでしょうか。
佐藤仁さん 先に述べたとおり、SNSやインターネットを利用することにはTikTokによらず、リスクは伴います。個人情報には十分留意した利用が望まれます。
スマホ・SNSの子どもの利用については、親子でしっかりと使い方とリスクについて話をできるようにすることが望まれます。また、SNSのリスクは子どもだけでなく、全世代で気を付ける必要があると考えています。
――ところで、Threadsですが、Metaが昨年提供して以来、早くも10代では約2割も利用しています。なぜ、人気があるのでしょうか。XやInstagramとどこが違うのでしょうか。
Threadsはサービス開始直後、脅威のスピードでユーザー伸ばしましたが、その後、物足りなさを感じた人が多く、伸び悩んだとも聞きますが。
佐藤仁さん 若い世代は、新しいサービスが出たらすぐに利用しようとする傾向があります。ThreadsはMetaが運営しているため、若年層に人気があるInstagramからもリンクされており、リーチしやすいのも特徴の1つです。
TikTokも初めて調査をした2020年には、全体での利用率は4%程度、10代でも2割程度でした。今回から初めてThreadsの利用率を調査しましたが、来年以降、Threadsの利用率がどのように変化していくのかは注目です。
情報の「反響室」と「泡の壁」に閉じこもる危険性
――今後、若い世代のSNSはどう変化していくでしょうか。また、どんな課題があるでしょうか
佐藤仁さん SNSは突然新しいサービスが登場したり、サービスが停止や変化したりするので、先を読むのが難しいです。
SNSは自分自身の興味のある情報や意見が表示されやすい、いわゆるエコーチェンバー(自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような狭いコミュニティーで、同じような意見が繰り返される現象)や、フィルターバブル(自分と同じ傾向の情報が「泡の壁」のように囲んでいて、自分とは違う意見・情報が見えにくくなっている状態)による思考の偏向はどの世代にとっても課題の1つと考えます。
また、SNSにおける偽情報の拡散や誹謗中傷の相談件数なども増加傾向とのことなので、課題と考えています。
――たしかに、それは大きな問題点ですね。
佐藤仁さん SNS(特にTikTok、Instagram)の利用は若年層ほど高くなっており、親世代にはわからない世界、という構図になっているともいえます。セキュリティーや個人情報などの問題は、親子での対話が望まれると考えます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)