コンビニエンスストア各社の業績が好調だ。ファミリーマートの2024年2月期の通期決算では、本業のもうけを示す事業利益が過去最高に。セブン&アイ・ホールディングスの営業利益も過去最高だった。さらに、ローソンも増益となっている。
だがSNSでは、物価高騰でコンビニに行かなくなったとの声も少なくない。流通ジャーナリストの渡辺広明氏は、「定価販売中心のコンビニの来店客が減ること、すなわち日本経済が浮上しないことと直結し、実質賃金がその鍵を握りそうだ」と話す。
客単価の上昇が業績好調の一番の理由
日本フランチャイズチェーン協会は、コンビニの統計調査を年間集計したデータを公表している。2023年の平均客単価は、コロナ前の19年と比較すると約80円上昇した。渡辺氏によれば、この客単価の上昇が、業績好調の一番の理由だ。
客単価が上がる原因はこうだ。1つ目は、近場のコンビニを日常的に使う高齢者の増加だ。これまでのコンビニは「緊急購買」が多かったが、最近は日常的に使われる場面が増えた。そのため、食費を中心に買い上げ点数も上がった。
2つ目は、各社のPB(プライベートブランド)で付加価値の高い商品を販売し、商品単価をアップさせた。セブン-イレブンのブランド「セブンプレミアムゴールド」が一例だ。3つ目は、原材料やエネルギーの価格高騰で商品単価が上がったことだ。
ただし、2023年の年間来店客数は、19年比で約13億人減とコロナ前の水準には戻っていない。「直近は、来店客数が増えていなくても、客単価で売り上げの上昇を続けていた」と渡辺氏。だが今後も日本の人口は減少していくため、客数を増やすのは難しいと話す。
「客数は全体的に減っているため、客単価の伸びが止まれば、営業利益も落ちていくと思います」
商品単価は上がり続ける傾向
売り上げの仕組みを単純化すると、「客数」と「客単価」の掛け算。客数は減っていくため、客単価上昇に繋がる買い上げ点数を増やす施策が必要になる。「一番簡単な方法は、当たり前で、簡単では無いですが利用者が買いたくなるような魅力的な商品を開発することです」。
渡辺氏は、今後も商品単価は上がり続ける傾向にあると予測する。昨年はエネルギーや原材料高とグローバルの影響による商品単価アップだったが、賃上げの原資を確保、トラックドライバー不足の影響による輸送費高騰など今年は夏に向けて国内の影響によるものとなっていきそうだ。この環境下で賃上げが追いつかず実質賃金が下がり続けた場合、定価販売のコンビニに行かない人が増える可能性もある。
しかし、4月以降の賃上げで実質賃金が上がる見方もある。賃上げが始まり、世の中の節約意識が変われば、コンビニの来店客数や営業利益が高水準で継続の可能性もあり、国民の誰もが訪れるコンビニの動向は、国内経済の先行きの重要なバロメーターとなりそうだ。