国民年金の納付時期が、延長されるのか――。複数の報道によると、厚生労働省は20歳から65歳まで納付した場合の経済効果について試算する方針だという。現行では60歳までだ。
2040年には、「団塊ジュニア世代」が65歳を迎え、高齢人口が大きく増加する。「支えられる人」が大幅に増えたら、今度は70歳を超えても年金を払い続けている未来が来るのか。
2040年には人口の約35%が高齢者に
報道によると、国民年金の納付を65歳までとする案は、来年予定される年金改革に向けた5年に1度の財政検証で試算されるものだ。現在、納付期間は60歳までで、月額1万6980円。5年延長すると納付額は101万8800円増となる。
団塊ジュニア世代が65歳をむかえる2040年には、もっと抜本的な年金改革が必要になるかもしれない。総人口に占める高齢者の割合が、過去最大の約35%に達すると計算されているのだ。
半面、労働の担い手となる現役世代が急減する。現在、賦課方式をとっている年金制度では、年金を支払う側の人口と受給する側が変化するため、今の年金制度の根本から揺るがすかもしれない。納付期限がさらに延長される可能性も、あるのだろうか。
第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストを取材した、2040年の状況を予測してもらうと、「年金制度が破綻していることはありませんが、働く人が減っているため、受け取れる年金の価値が目減りすることは考えられます」と答えた。
国民年金は納付を完了したあと、受給年齢は60歳・65歳・70歳と繰り上げたり、繰り下げたりできる。繰り下げた場合は、受給時期が遅くなる代わりに受け取る金額が増えると説明した。
そこで、「目減りした年金給付額を調整する意味でも、年金受け取りを65歳から繰り下げてギャップを調整することは、個人で必要になるでしょう」と星野氏は指摘する。
年金以外で収入を得る必要性
年金の利点は終身給付にある。生命保険や積立貯金などの資産形成とは違う。「受給を繰り下げて、ある程度高い水準の給付を得て、そこから長生きすれば終身給付の恩恵を受けることができます」と答えた。
2040年になれば、ある程度の年金給付を得るために、繰り下げで年金を受け取れない期間は年金以外で収入を得る必要があると星野氏。「働ける体の状態を維持して、健康寿命を伸ばしていくことが大切になっていくでしょう」と述べた。