高校生のインターネット平均利用時間が、平日1日あたり6時間超だったと、こども家庭庁が2023年度の調査で明らかにした。ネットを趣味・娯楽に利用する高校生男子は3時間53分、女子は3時間11分。勉強・学習に利用する高校生男子は1時間16分、女子は1時間25分だった。
ネット・ゲーム依存の予防・回復支援サービス「MIRA-i(ミライ)」所長で臨床心理士の森山沙耶さんは、「ネットの利用時間の長さだけで依存症だと判断できないが、依存のリスクは高まっている」と指摘する。
長時間利用だけで「ネット依存症」とは言えないが
前出の調査は、青少年のインターネットの利用状況を調べたものだ。2023年11月1日~12月7日に調査を実施。無作為抽出した0~9歳の保護者、10~17歳の子どもとその保護者を対象にし、計8761人の回答を集計した。
平日1日あたりのネット平均利用時間を調べると、高校生は6時間14分、中学生は4時間42分、小学生は3時間46分だった。いずれも「動画を見る」ために利用することが最も多かった。
この結果に森山沙耶さんは、なかでも高校生の状況に警鐘を鳴らした。常にネットに接続しやすい環境では、生活の全てにネットがないと成り立たないと感じる状態に陥りやすい。
国内の中高生を対象にネット依存症を調査したある研究では、依存症の人は7.9%、依存傾向がある人(予備軍)は15.9%だったと、森山さんは説明する。この研究では、中高生の約4人の1人が依存症か予備軍に当たる。
ネット依存の症状として一般的なのは、行動面や心理面でネットに捉われる状態になってしまうことだ。他のことを後回しにしてネットを優先させたり、使用をやめたくてもやめられなかったりする状態だ。
不安やストレスを和らげるためにネットを利用することも、症状の1つ。そのほか、利用時間が徐々に伸びてしまったり、親との関係の悪化など身の回りの対人関係にトラブルが生じてしまったりする傾向もある。親との言い争いが増えることが一例だ。
「ある程度利用時間が長くても、現実の生活がきちんと送れてバランスが取れていれば、そこまで問題ではありません。バランスが崩れていろいろな問題が起きても、心身の状態が悪くても使い続けてしまう状態は、依存である傾向が高いと言えます」
保護者は自分の子をどう助ければ
対策として重要なのは、自分自身が依存傾向にあると気づくことという。そのために、ゲームやネット依存の書籍を読んでみるなど、依存症に陥るメカニズムの知識を持つことが必要になる。また、依存症専門の医療機関が公開するスクリーニングテストを受けてみる。
その上で、1人で悩みを抱えず、友人や家族に打ち明けてみる。深刻な場合は、カウンセラーなどの専門家に相談する。利用時間を減らすのではなく、依存せざるをえない背景に目を向けて対処することを、森山さんは勧める。
ネットが生活の中心にならないよう、リアルの楽しみを作ることも大事だ。スポーツをして体を動かすなど、不安やストレスをネット以外の活動で解消することが必要だという。
だが、高校生のように大人になり切れていないと、自分から積極的に解決に動くには未成熟かもしれない。保護者は、自分の子がネット依存で苦しんでいたら、どう助けてあげるのか。森山さんは「本人の性格や意思の問題だと一方的に責めたり、批判したりしない」よう促した。
この認識を前提に、子どものネット利用をやめさせる。制限が難しい場合、依存してしまう背景にある困りごとや問題に寄り添って、一緒に解決することを考えることが大切だと話した。