「当事者意識の薄いサラリーマン社長」のもとで働くのはキツイ
もっとも、一方でAさんは、同族経営のメリットもあるという。
「新卒当時、友人の会社が社内を二分する派閥争いで大荒れだったのですが、同族企業にはそういうことがないからいいね、と羨ましがられたことがありました」
さらに、「非同族経営の上場企業」のデメリットと並べてみると、同族経営も悪いとは一概には言えないと思う、と明かす。
「自分の任期さえ無難に過ごせればいいと考えているサラリーマン社長には、中長期視点での大型投資も、企業風土の抜本的改革もできやしませんよね。それに比べると、同族企業の社長はいい意味で独裁を振るってくれて、話が早いのでありがたいです」
経営者としての当事者意識が薄く、会社を成長させるアイデアもない。社外のコンサルタント会社に高額のフィーを払って、数年間の任期中の経営戦略を立てさせ、未達成でも悪びれることなく退職金をもらって去っていく――。
そんなサラリーマン社長に接する機会がAさんには多く、「そういう人のもとで働くのは、同族経営で働くよりもキツイ。結局は運用次第なんだな」と思うことがよくあったとか。結局、上場でも非上場でも、同族経営でもサラリーマン経営でも、メリットとデメリットがあるといえそうだ。
「でも、いなば食品の場合には、非上場の同族経営のデメリットが最悪の形で出てしまったといえそうです。同じような同族経営に苦しんでいる人たちは実は多い。『匿名でSNSや口コミサイトに情報を漏らして炎上させないと会社は変わらない』と思う人が増えても仕方ないかなと思います」