シニアで働く人同士の「相乗効果」がある
J‐CASTニュースBiz編集部は、リクルートのジョブズリサーチセンター・センター長の宇佐川邦子さんに話を聞いた。
――日本は「働けるうちはいつまでも」働きたい割合が2割以上と、主要11か国の中でずば抜けて高いです。欧米や中国でも3~5%台。みんな老後を悠々自適に暮らしたいという人が多いようです。
しかし、たとえば朝日新聞が行なった世論調査(「年金制度に不安」現役世代72% 朝日新聞世論調査)では、現役世代の72%が「公的年金制度」に不信感を抱いており、31%が「公的年金に加入したくない」とまで答えています。
「いつまでも働きたい」という人が多いのは「働き続ける意欲が高い」というポジティブな考えによるのか、「いつまでも働かないと老後が困る」というネガティブな考えによるのか。ズバリ、どちらだと思いますか。
宇佐川邦子さん 私は、日本はすばらしい国なのではないかと思っています。私は、高齢者の雇用促進の仕事をしており、多くのシニアの方にインタビューして「何歳くらいまで働きたいのか」と聞いていますが、みんな自分が思っている以上に「まだまだやれる」と自信を持つ人が多いのです。
たとえば、60歳の人に「何歳まで働きたいですか」と聞くと、「70代の半ばくらいかな」と答えます。ところが、70歳の人に聞くと、「80代の半ばくらいかな」と、5~10歳ずつ増えていくのです。
これは合理的に説明できます。65歳で働いている人の周りには2、3歳年上の人が働いている。その人の周りには70歳の人が働いている。そういう、周囲で頑張っている年上の人を見ていると、自分でもまだまだやれるかもと、自信が湧いてくるのです。
10年前ならダメだろうと思っていた年に自分がなった時、さらに先まで働いている自分が見えてくるのです。
――なるほど、シニアで働く人同士の相乗効果ですね。私も70代の団塊世代で、働いている仲間が多いから気持ちはわかります。ところで、多くのシニアは何を目的に働きたいと思っているのでしょうか。
宇佐川邦子さん 当社の「シニア層の就業・意識調査2023」(複数回答可)では、「生計の維持のため」が一番多く4割ですが、それと同じ4割が2番目の「健康のため」です。その次に多いのが「お小遣いをもらって楽しみたい」と「社会とのつながりを持ちたい」です。
また、「社会に貢献したい」「働くのが好きだから」「視野を広げたい」という理由も上位にきています。「老後の不安」のため働かざるをえないというより、「老後を楽しむ」ために働き続けたいという人が多いのです。
実際、インタビューで働いているシニアの方々のお話を聞くと、「アルバイト先で高校生と孫の話ができて楽しい」とか、「子どもの手が離れて、自分が好きなことをやってお小遣いが稼げてうれしい」とか、元気で顔色のいい人が多いです。
シニアになると、若い時より仕事が多様化して面白くなるようです。