「配属ガチャ」という言葉がある。入社後の配属先が希望と異なると、転職を考える若者が多いなか、今年(2024年)の新入社員はいつ配属先を確定したのか。
リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」が2024年4月9日に発表した「【2024年卒 就職活動TOPIC】入社後の配属に関する状況(3月卒業時点調査)」によると、大学卒業時点で配属先が確定していたのは46.9%。
しかし、学生側が配属先を知りたい時期と、実際に確定した時期には大きなズレがある。就活生は企業に希望を伝えるべきか。専門家に聞いた。
入社決定前に知りたい学生4割、希望通りは2割
就職みらい研究所の調査は、2024年卒業予定(当時)の大学生(964人)と大学院生(331人)の合計1295人が対象。卒業式シーズンの2024年3月15日~3月18日に聞いた。
そのうち、今年(2024年)3月の卒業時点に配属先が確定している大学生は、就職確定者のうち46.9%だった【図表1】。
配属先の確定時期を聞くと、もっとも多いのは「入社後」で31.4%、次いで「入社を決めた後~入社前まで」の29.8%と続く。
大学生の希望が4割近くに達する「配属確約での応募~内定取得後に入社を決める」までの時期は、合計が20.3%にすぎない【図表2】。
これを見ると、入社前のさまざまな段階で早くから配属先の確定を求める学生側と、なるべく入社後に配属先を決めたい企業側の思惑の落差が目立つ。
【図表3】は、配属先についての希望を企業側に伝えたかを聞いた結果だ。
それによると、応募~選考前では64.0%、内定承諾後では55.2%が「希望を伝えた」と回答した。しかし、そもそも内定承諾後に配属先の希望を伝える機会がなかったと答えた学生も28.1%いた。一方、特に希望はなかったという学生も全体で約2割いた。
さらに、「もし最初の配属先が希望と異なる場合、希望の仕事に就くまで転職せずに働き続ける期間」を聞くと、「3年以内に転職する」という人が30.8%いる一方、「希望の仕事ができるまで就職確定先で勤務し続ける」とう人も39.4%いた【図表4】。
就活生の間でも、入社前の配属先確定に賛否
このように、入社前に配属先を知りたい学生が多い一方、特に配属先にこだわらない学生も一定数いることがわかった。学生から寄せられたフリーコメントをみると、それがよくわかる。
入社を決める前に配属先を確定してほしいという意見はこうだ。
「どこの配属先になるか分からないまま選考を受けるよりも、細かく職種別になっているほうが確実に自分のやりたい職種で受けることができるので、就活がやりやすい」(文系女性)
「希望でない職種や適性がない職種に配属されることですぐ辞職するよりも、応募や選考の段階で適性のある仕事や自身の希望する職種配属が確定しているほうが、学生と企業の両方が納得できる」(文系女性)
一方、入社後でいいという意見にはこんな声が――。
「結局働いてみないとわからないことが大半だと思うので、働いていくなかで自分に合う仕事、職種を見つけるのがよいと考えている」(理系男性)
「自分はスペシャリストよりもゼネラリストになりたいので、昨今のこの流れはあまりよいと思えていない」(文系女性)
「自分のキャリアは自分で決めたい」という意識の表れ
J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった「リクルート就職みらい研究所」の栗田貴祥所長に話を聞いた。
――入社を決める前までに配属先の確定を希望する学生の割合が約4割、一方、実際にその時期までに配属先が確定している学生の割合は約2割という結果です。このギャップについては、それぞれ学生側、企業側の立場からどう思われますか。
栗田貴祥さん 学生の皆さんは、入社を決める際の要素の1つとして、配属先の確定を希望する方が4割いる一方、企業側は各社の事情や総合職採用などの採用方法により、入社後に配属先を決められる企業もあるため、このようなギャップが生まれていると思われます。
――入社前に配属先の確定を求める就活生の動きはいつごろから現れたのでしょうか。また、その背景には何があるのでしょうか。
栗田貴祥さん 学生の「自分のキャリアは自分で決めたい」という意識が最近高まってきています。また、不確実性をなるべく下げ、就職先を決めたいという学生が近年増えている印象を持っています。
その表れの一つとして、どこで、どんな人たちと、どんな仕事を明確にしたいという学生の気持ちが、入社前に配属先の確定を求める要望に繋がっていると思います。
――栗田さんは、就活生は企業側に入社前のどの段階かを問わず、しっかりと配属先の希望を出すべきだと思いますか。また、それに対して企業はどのような対応をすべきだと思いますか。
栗田貴祥さん 希望の配属先がある学生は、入社前にぜひ伝えてみてください。企業側は、選考プロセスの段階から、学生に対して希望する業務や配属先の有無を聞く機会を設けていただきたいと思います。
各企業の事情により、入社前に配属先が明示できるわけではないと思います。もっとも、明示できない場合は、いつ頃、配属先が確定するのか、どのような部署に配属される見込みなのかなどの見通しを学生に伝えていただければと思います。
学生の志向を企業側が知るのは、企業のためにもなる
――学生のコメントみると、企業が入社前に就活生に配属先を伝えるか否かについて、「配属部署が明確になり、不安が解消される」という肯定的な意見と、「実際に働いてみないと、自分の適性がわからない」という否定的な意見があります。それぞれどう思いますか。
栗田貴祥さん 学生により、配属先を事前に提示し、業務内容や勤務地を明確にしたうえで入社を決め、キャリアを積みたいという学生と、配属先を特定せず、入社後にジョブローテーションを重ねながら、キャリアを積みたいという学生もいます。
企業側は、一律的な採用手法や対応ではなく、配属先を確約する採用コースや総合職的な採用コースの両方を用意するなど、多様な選択肢を用意するのがよいと思われます。
――就活生に対して、今後の就活で「配属先の希望を求めるべきか、否か」についてアドバイスがあればお願いします。
栗田貴祥さん 明確に就いてみたい部署や担当したい業務があるのであれば、面接などの選考プロセスの段階から、企業側に希望を伝えてみてほしいと思います。
その希望がかなうか否かは各企業の事情により異なりますが、学生の志向を企業側が把握することで、その企業内での長期的なキャリアの積み方を企業側も考慮してくれることにもつながるかもしれません。
(J-CASTニュースBiz編集部 福田和郎)