JR東日本は、インターネット銀行「JRE BANK」を2024年5月9日にスタートする。口座開設や残高によって受けられる特典が、話題だ。
JR東日本営業路線内の片道運賃・片道料金が4割引になる優待割引券が最大で5枚、普通列車のグリーン車が無料になる券が最大年4枚、といった具合。これほどの特典を用意してまで、JR東が銀行業を始める理由は。
「ライフスタイル」のデータ手に入れたい
「JRE BANK」の特典は、口座開設や、「JRE POINT」ウェブサイトと口座の連携が必要。資産残高によって得られるものもある。
前述の他にも、JR東が勧める4駅のいずれかに新幹線で向かう「どこかにビューーン!」のサービス利用で、2000ポイント割引クーポンが提供される。東京からの利用だと6000ポイント必要なので、かなりの割引だ。加えて、資産50万円以上だと高速バス無料クーポンプレゼントや対象店舗でのワンドリンクサービス、JR東日本ホテルズの対象ホテルでの特典・割引がある。
「JRE BANK」は、楽天銀行との協業だ。スマートフォンの「JRE BANKアプリ」、もしくはウェブサイトから口座を開設のうえ利用できる。振込、入出金明細、定期預金、外貨預金、デビット機能付キャッシュカードというサービスを用意している。
ニッセイ基礎研究所の金融研究部の福本勇樹氏に聞いた。JR東は「Suica」や「VIEWカード」などの決済ツールを、交通目的以外にも提供する。駅構内に商業スペースが広がる「エキナカ」が象徴的だ。こうして同社は徐々にプラットフォーマー化し、エコシステム(経済圏)を拡大してきたと説明した。
「エコシステム拡大には、利用者の交通利用にとどまらない『ライフスタイル』全体に関わるデータを収集する必要があります。銀行は全ての決済の軸となるので、ライフスタイルデータを手に入れることで、エコシステムの拡大を図る狙いがあるのでしょう。」
脅威なのは「タッチ型」クレカ
大規模な割引やポイント還元する理由について、福本氏は、「VISAタッチ」や「Mastercardコンタクトレス」といったタッチ型クレジットカード決済を挙げた。「特にVISAは地域の交通機関で実証実験を進めるなどして、公共交通の経済圏を切り崩しにかかっています」と指摘。JR東にとって脅威になってきているとみる。
駅やバス停周辺の店で使える「VISAタッチ」などと差別化を図るため、特に国内の観光客に向けて、優待割引券などの公共交通の利用で得をする施策を導入。これにより、JR東日本のエコシステムを維持・拡大させたい狙いがあるのではないかと福本氏は述べた。