2024年4月からNHK総合テレビで放送が始まった、平日午後の情報番組「午後LIVEニュースーン」。15時10分から17時57分まで、約3時間にわたって生放送される長時間ワイド番組だ。
ただ、この時間帯はすでに民放がワイドショーやニュース番組を放送している時間帯。わざわざ「レッドオーシャン」にNHKが参入する意義はどこにあるのか。メディアエンターテインメントを研究する同志社女子大学の影山貴彦教授に見立てを聞いた。
「民放のワイドショーやニュース番組にやや辟易している視聴者が多い」
すでに競合番組がひしめいている時間帯で同番組が始まる意義とはいったい何なのか。影山氏はNHKなりに勝算があると考えているのではないかと指摘する。
「民放のワイドショーやニュース番組にやや辟易している視聴者が多いように感じます。確かに、その内容は横並びであることが多く、どのチャンネルを見ても一緒。そんな中、取材力で上回るNHKが地に足のついた内容でニュース番組を放送すれば、視聴者は注目するはずです」
NHKならではの「差異化」で視聴者を集めようという思惑があるということのようだ。
「ニュースーン」が始まることで発生する意義は他にもないだろうか。具体的には、「長時間で生放送」という番組を放送すれば、その時間帯に「複数の収録番組を詰め込む」よりも放送を省力化できる可能性はないか。例えば、15時~18時の3時間で1時間番組を3つ制作するよりも、3時間番組を1つ制作した方が必要なスタッフ数は減らせそうだ。スタジオでの掛け合いが増えれば、編集作業も減らせそうだ。影山氏は「ニュースーン」がどうであるかは置いておくとして、一般的な話として、
「近年、例えば1時間番組のバラエティー番組を2時間スペシャルにして、つまりは『ワイド化』してその時間帯の番組数を減らして放送するという例が増えましたが、確かに、そのようにすれば、番組制作を省力化することは可能です。さらに、それが生放送とあらば、さらなる省力化が図れるのは事実です」
と語った。さしずめ、テレビ業界にも働き方改革が浸透し始めている可能性もありそうだ。
紅白歌合戦は「生の長時間番組」でも「省力化しようなどという発想は微塵もない」
となると、世の中全体が休もうとする大みそかに「生放送の長時間番組」が放送されることが多いのも納得がいく(23年の12月31日にはTBS系で「WBC2023 ザ・ファイナル」が生放送された)。ただ、その一方で、NHK紅白歌合戦は「長時間かつ生放送」の番組である一方、放送の数日前からリハーサルが連日開催されるなど、お世辞にも「省力化」とは程遠い状況。「本末転倒」になってはいまいか。
「紅白は国民的番組であり、もはや超越的存在。大みそかという世の中的には『休み』になっている中でもたくさんの労力をかけて放送する意義がある番組と言えましょうから、『生放送の長時間番組』であっても省力化しようなどという発想は微塵もないと思います。お金と手間をかけて、NHKの『キラーコンテンツ』として制作されているはずです」
最後に、影山氏はこれに関連させる形で「ニュースーン」の今後を占った。
「となれば、『ニュースーン』の今後の成功は、視聴者から『省力化しているな』と思われない充実した内容を提供することにかかっているのではないでしょうか。生放送ですから、大事件が起きた場合などはすぐに対応できるわけで、そのような対応を丁寧に行っていけば、自ずと視聴率は上がるでしょう」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)