帝国データバンクの「2023年度『飲食店』の倒産動向調査」によると、ラーメン店を含む「中華料理店、その他の東洋料理」の倒産は130件と過去最多となった(2024年4月4日発表)。
「コロナが収束に向かい多くの飲食店が賑わうようになったものの、光熱費や各種食材の価格高騰、人手不足の深刻化、賃上げ対応など新たな経営課題が噴出し、採算が確保できずに事業継続を断念する事業者が急増している」と帝国データバンクでは指摘している。
単品でも1000円以上でないと厳しい
ラーメン店の独立を支援する、宮島ラーメンスクール校長の宮島力彩氏に取材した。倒産してしまうラーメン店経営者が陥りがちな失敗として、営業不振時に全品セールや半額券の配布をすることだと語った。
「こうした安売りは実施しても集客が伸びず、やっているうちに自分の首が締まっていきます」
ラーメン店がこれからも生き残っていくために必要な条件として、同氏は価格をキーワードとした。例えば、「トッピング全部乗せ」で1500円、単品でも1000円以上の値段でないと厳しいという。高価格に設定する効果を、こう説明する。
「売価を上げることで、遠くのお客さんに響く『味』づくりや、商品の見せ方、売れるお店作りなどにも力をいれられます。ラーメン店は薄利多売ですが、手作りで原材料費をかけた『味づくり』を追求できる提供する体制が整うのではないでしょうか。そうしたお店には、固定客が多くつきます」
宮島氏によると、近頃人気のラーメンジャンルに、透き通った清湯スープを使った「ネオ・清湯系」があるという。東京都杉並区にある「西荻燈」や、同荒川区の「Ramen にじゅうぶんのいち」は、ミシュランガイドのビブグルマン部門に選ばれている。同江東区の「麺 ふじさき」では4種類の高級地鶏をスープに使い、「醤油らぁめん」は1200円から、「塩らぁめん」は1250円からと、一杯の料金が1000円を超える。
新ジャンルに挑戦する意義を、宮島氏はこう語った。
「研究熱心な姿は顧客にも伝わり、そこでしか味わえないラーメンを目指し続けている姿勢こそが、売価が高くても食べに来てくれる、熱心なファン獲得に繋がります」
一方で、「『こだわりの強い職人』では通じない時代。店づくりや商品の発信、ファンづくりの意識の無いお店は、淘汰されるでしょう」とした。
成功している店の特色は
ラーメンの価格については、J-CASTニュースBizの2024年2月9日付記事で、ラーメン店「でぶちゃん」を経営する甲斐康太氏が言及していた。
同店で最も高いメニューは、「天城黒豚チャーシューメン」が1550円のほか、1400円や1250円のラーメンが並ぶ。(4月10日時点)。甲斐氏によると、「売価を上げると、会社に残るお金が増えます。その分を人に投資するとお店のサービスクオリティーが上がります。そうするとお客様も増えて、プラスの連鎖が生まれます」と話していた。
「人気ジャンル」を押し出して、成功しているラーメンチェーンもある。「横浜家系ラーメン」や「ラーメン二郎リスペクト系」を運営する、ギフトホールディングスだ。家系の「町田商店」は全国136店舗展開。ラーメン単品は800円だが、いろいろな具材がトッピングされた特製ラーメンは1100円だ。
さらに、二郎リスペクト系を提供する「豚山」は全国に全国33店舗展開で、小ラーメン900円、チャーシュー8枚の大ぶたダブルは1350円となっている。