今年の夏には、実質賃金はプラスになる?
――なるほど、今回もそうなるかもしれないと、控えめな数字を予想したわけですね。ところで、実質賃銀がプラスに転じるのは、いつごろと見ていますか。
丸山健太さん 今年の春闘の賃上げ率は、連合の発表によると、前年比プラス5%台の高い水準です(第3次集計は5.24%増)。そうした賃上げの成果が賃金に織り込まれるのは夏ごろです。好調な企業業績や日経平均株価の強い上昇を考えると、夏ごろか、今年後半にはプラスに転じるとみているエコノミストが多いです。
――そんなに業績が好調ならば、企業は巨額な内部留保をもっと賃上げやボーナスに使えるはずだ、という議論があります。たとえば、帝国データーバンクが2024年3月26日に発表した「企業の『潜在賃上げ力』分析調査」を見ると、企業が内部留保の30%分を人件費に「投下」すると、中小企業で5.9%増、大企業ではなんと18.9%増、全体でも6.3%増の賃上げが実現するとあります。
丸山健太さん そのリポートは読みましたが、内部留保をもっと人件費に使えば高い賃上げが実現するというのは、その通りだと思います。
ただ、企業には内部留保を取り崩せない事情があります。先行きの不透明感です。「失われた30年」のほか、コロナ禍でゼロゼロ融資に頼らざるを得なかった経験があり、同じような危機に備えて資金調達を用意しておく必要があります。
――今夏のボーナスが特に多く出そうな業界はどこですか。
丸山健太さん 情報通信業は、人手不足と高い需要があって、高額が期待できるでしょう。鉄道、旅客、運輸、飲食関連業も、昨年はコロナから十分に回復し切っていないので、今年は押し上げる効果があるとみられます。また、自動車も春闘では満額回答が多く出ており、円安の中で各社とも好調なので、期待できそうです。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)