昨年冬ボーナスが悪すぎて、控えめに予想した数字
今回の夏のボーナス見通し、どう見たらよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、調査をまとめた三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員の丸山健太さんに話を聞いた。
――民間企業の平均支給額が1人当たり40万8770円で、前年より2.9%上がる予想ですが、この金額は「上がってよかった!」と喜ぶ数字なのか、「もっと上がるはずなのに」と残念がる数字なのか、ズバリどちらですか。
丸山健太さん まあまあ、喜んでいい金額なのではないかと思います。個人的にはもっと上がってほしいし、上がる伸び代(しろ)はあるはずだという思いはあります。しかし、まずは【図表2】の夏ボーナス予測の「支給総額」を見てください。
支給総額は、1人当たり平均支給額×支給労働者数として計算します。つまり、企業が今夏のボーナスのために出す人件費の総額ですが、前年比より4.4%増えると見込んでいます。
これは直近の消費者物価指数(2024年2月現在)の3.3%増を上回るばかりか、2023年通年の消費者物価指数3.8%増より高い数字です。
現在、23か月連続実質賃金(2024年2月の毎月勤労統計)のマイナスが続いていますが、物価上昇分より高いボーナスを出すことによって、ようやく実質賃銀がプラスになる展望が開けそうです。
そうなると、個人消費の回復を下支えすることが期待されます。
――「もっと上がる伸び代(しろ)があるはず」と言いましたが、どういうことでしょうか。
丸山健太さん 民間企業の平均支給額を前年比2.9%増と推測したのは、じつは控えめな数字です。企業が利益剰余金を内部留保として貯め込んだ額は、571兆円という空前の巨額にのぼります。
また、瞬間風速的に非常に好調な企業業績や、4万円に迫る日経平均株価の強さを考えると、個人的にはもっとボーナスを出せるはずという思いはあります。しかし、昨年(2023年)冬のボーナスが悪すぎました。
昨年も春闘賃上げ率は3.60%と、30年ぶりの高水準だったので、当社は冬のボーナスの平均支給額を前年比2.2%増と予想したのです。しかし、実際は0.7%増にとどまり、想定外の小幅な伸びに終わりました。支給総額も1.8%増と、物価上昇分をはるかに下回りました。
春闘の高い賃上げ率にもかかわらず、「期待外れ」の結果に終わったのです。