働き盛りにおススメ!忙しくても「運動を習慣化する秘訣」 運動する喜びの「引き出し」多く持つ/ニッセイ基礎研究所・村松容子さん

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   お腹周りの脂肪が気になり、「運動しなくては」と思い始めたアナタ。しかし、運動習慣を身につけるのは難しく、さらに長続きさせるのはもっと難しい。

   そんななか、ニッセイ基礎研究所の村松容子さんが「運動を習慣化する秘訣」という研究報告を発表した。

   忙しいビジネスパーソンでも運動を長続きさせる秘訣があるのか。村松容子さんに聞いた。

  • ジョギングを楽しむ女性
    ジョギングを楽しむ女性
  • 村松容子さん(本人提供)
    村松容子さん(本人提供)
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  • 村松容子さん(本人提供)

男性より健康意識が高い女性が、運動する人が少ない謎

   この研究報告は、ニッセイ基礎研究所研究員の村松容子(むらまつ・ようこ)さんが発表した「運動を習慣化する秘訣」(2024年3月26日付)「身体活動基準2023~座位行動時間、筋トレに関する指針が追加」(2024年3月29日付)など、一連の健康と運動に関するリポートだ。

   村松さんは、これらのリポートで、

(1)運動を始めた理由
(2)週に1回30分以上の運動を行なっているかどうか
(3)それを週に2回以上の頻度に増やしているかどうか
(4)さらにそれを1年以上続けているかどうか

といった項目を厚生労働省やスポーツ庁のデータ、そしてニッセイ基礎研究所のアンケート調査などをもとに分析した。

   興味深いのは、「自分の健康状態を常に把握している」という健康意識の高さは、女性(28.4%)のほうが男性(17.4%)より10ポイント以上も上回っているのに【図表1】、運動をしている割合は男性のほうが女性より高いことだ。

(図表1)自分の健康状態を把握している割合(ニッセイ基礎研究所作成)
(図表1)自分の健康状態を把握している割合(ニッセイ基礎研究所作成)

   具体的には、20~64歳では男性が23.5%に対し、女性は16.9%。65歳以上では男性が41.9%に対し、女性は33.9%。このように、健康意識の差とは真逆の結果となった【図表2】。

(図表2)運動習慣者の増加目標(ニッセイ基礎研究所作成)
(図表2)運動習慣者の増加目標(ニッセイ基礎研究所作成)

   また、ここ10年ほどは、運動を持つ人の割合は男性ではほぼ横ばいだが、女性は低下傾向にある。これはどういうことか。

   さて、「運動を始めた理由」を見ると、男女ともに「運動不足を感じる」「健康のため」が高い傾向にある。

   男性では次に「筋力増進・維持のために」「運動不足を感じたから」が上位にくるが、女性では「肥満解消・ダイエットのため」「美容のため」の割合が非常に高い。特に49歳以下では、「健康のために」を大きく上回り、ダントツのトップにくる【図表3】。

(図表3)この1年間で運動を週1回以上実施した最も大きな理由(ニッセイ基礎研究所作成)
(図表3)この1年間で運動を週1回以上実施した最も大きな理由(ニッセイ基礎研究所作成)

   ところが、「運動習慣が1年以上継続している」人の理由を見ると、男性では「健康のため」「記録や能力を向上させる」ためが多く、女性でも「健康のため」「記録や能力を向上させる」ためが多くなり、「楽しみや気晴らしのため」が加わってくる。

   こうしたことから、村松容子さんは「運動を習慣化する秘訣」としてリポートをこう結んでいる。

「1年以上継続するためには、運動不足を解消するといった消極的な理由では難しく、より積極的な心身への効果を期待したり、運動によって自分なりの目標を持てたりすること、また、楽しみなどを見出せたりすることが重要なようだ」

運動=生活習慣病予防のイメージが強すぎる

   J‐CASTニュースBiz編集部は、ニッセイ基礎研究所研究員の村松容子さんの話を聞いた。

――なぜ、女性のほうが男性よりも健康意識がかなり高いのに、男性よりも運動習慣を持つ人が非常に少ないのでしょうか。その落差が大きくて、じつに不思議です。

村松容子さん 私が運動と健康に関して大きな課題だなと感じているのは、「運動=肥満抑制・生活習慣病予防」というイメージがあまりに浸透しすぎている点です。

運動が「肥満解消」と強く紐づけられているため、運動しない女性が多いのは、「自分は太っていないから大丈夫」という思いもあるのではないかと考えています。

現実に、女性は男性と違って中高年になっても「メタボ」が問題になるほど太っている人は少ないです。普段から食生活を充実させ、食べ物の栄養バランスをしっかり考え、ある程度体型をキープしていれば、健康でいられると考えています。だから、もっとやせたいとダイエットや美容を目的にする女性以外は、あまり運動の必要性を感じていない傾向が見られます。

それと、男性より家事を行なっている人も多いでしょうから、生活の中で体を動かしているのでわざわざ運動をしなくても、身体は十分に動かしているという意識も感じられます。

――「運動は生活習慣病の予防につながる」と広まっている情報が、功罪を生んでいるわけですね。

村松容子さん 私はそのように感じています。運動の効果は生活習慣病の予防だけではありません。特に女性に多い骨粗しょう症の予防につながります。最近は運動不足によって、小学生が跳び箱を跳んだだけで手首の骨が折れることがあるなど指摘されることもあります。

特に女性は、高齢期になると、男性以上に筋肉や骨の衰えが激しくなります。若い時から運動を習慣づけないと、高齢になってから始めるのは難しくなります。とりわけ、筋力と骨密度を増す筋肉トレーニング(筋トレ)は若い時からやっておく必要があります。

――しかし、ヨガやピラティスなどを行なっている女性は増えているのでは。

村松容子さん ヨガとかストレッチといったリラクゼーション系の運動は、体を整えることが中心になっています。

厚生労働省が「健康づくりのための身体活動基準2023」で推奨している「息が弾み、汗をかく程度(3メッツ以上の強度の)身体活動を週60分以上」という基準に照らし合わせると、運動量が足りていないことになります。

また、女性は運動をして汗ばむのはイヤだ、汗臭い体で電車に乗りたくないという意識が強い人もいます。かといって、スポーツジムなどでシャワーを浴びるのも、着替えたり、お化粧直しをしたりするのが面倒だという人も少なくありません。

決め手は「運動すると楽しい!」「爽快感がある!」

――なるほど。そういった女性の意識がネックになっている面もあるわけですね。

ところで、単に「運動不足だから」とか「健康にいい」という理由だけでは長続きしないとリポートにあります。ズバリ、挫折しないで運動習慣を長続きさせる秘訣は何でしょうか。

村松容子さん 「運動すると楽しい!」「爽快感を味わえる!」といった運動することそれ自体が、自然と目標になる喜びを見出すことです。

たとえば、私の場合は、学生時代からテニスをしています。社会人の現在も、友人たちと4人で楽しめるダブルスの試合をして、コースぎりぎりにスマッシュが決まるとうれしいものです。単純にボールを追いかけているだけで夢中になれます。

また、時々、通勤にウォーキングを取り入れています。ウォーキングは5000歩ぐらい歩けば、爽快な気分になれるスポーツです。運動の魅力は、一瞬でも充実したハイな気持ちになれることです。その喜びを味わうことが大切だと思います。

――同じウォーキングでもダイエットや美容にためにすると、長続きしないということですか。

村松容子さん 一生懸命歩いてもすぐにやせるものではありません。なかなかやせないと、そのうち飽きるし、つまらなくなるでしょう。歩くこと自体が楽しくなって、ハイな爽快感を味わえるようになると楽しくなって長続きします。そして、いつのまにかやせる効果がでてくるかもしれません。

運動の効果を実感するには、筋トレがおススメ

――まず、運動が好きになること、楽しくなることが大切というわけですね。

村松容子さん もともと人は、幼少期、動き回ることが好きだと思います。しかし、私は学校教育の体育の授業で、運動へ苦手意識をもってしまった大人が出てきたのではないかと思っています。

特に私の子ども時代は、運動が苦手な子は、体育の授業で目立ってしまいました。たとえば、逆上がりができないと、残されて練習させられた、という思い出がある人も多いのではないでしょうか。器械体操、陸上、水泳...。運動が得意な子の中にも得手不得手があるのに、苦手部分が目立ってしまっていたように思います。

でも、いまの学校教育の体育では、苦手な子も、うまく参加できるよう考えられていると聞きます(笑)。

――体を動かすことが好きになるには、どうすればよいですか。運動が続かないのはどういう理由からでしょうか。

村松容子さん 運動の効果が実感できていない人が多いからだと思います。

そういう人には筋トレがおススメです。短期間で目に見える効果が挙げることができると言われます。たとえばスクワットや腹筋運動などを、無理のないレベルで少しずつ頑張ると、5回しかできなかったのが10回に、10回が20回に、と、面白いほど回数が増えていきます。

太ももの筋肉が目に見えて太くなりますから、サイズを測ると楽しくなります。太ももの周囲を1センチずつ増やすことを目標にすると、大腿筋が数か月であこがれの太さになるようですよ。

――目に見える効果と言えば、私は70代ですが、20年以上前にランニングを始めた時は、歩数計で毎日距離を記録したものです。そして、東海道53次の日本橋から京都までの地図に、今日は箱根を越えたとか、名古屋まで到達したとか、ワクワクしながら線を引いたものでした。

村松容子さん いまは紙ではなく、スマホやアプリですね。

ユーラシア大陸を横断してヨーロッパまで行ったとか、今度は月まで走ろうとか、目標と楽しみがたくさんできるでしょう。目に見えるかたちで、自分の「頑張り」が見えると続きやすいと思います。

大学受験の時に、ノートを何冊使ったとか、短くなった鉛筆をコレクションしたとか、「これだけ頑張ったのだから大丈夫、合格する」と自分を励ますのと似ていると思います。

社会人になってウォーキングを始めてからは、シューズを履きつぶして新しいものを買うのが楽しみとなりました。

古いシューズが頑張った自分のトロフィーに

――古いシューズが頑張った自分のトロフィーになるわけですね。

村松容子さん 運動をすると得られる「喜び」が1つだけだと、いずれ飽きてくるものです。

そこで、少しずつ違う目線の「喜びの引き出し」をいっぱい作っておくといいです。たとえば、ランニングをしていても、最初は面白いようにタイムが伸びても、いずれ伸び悩むときがくるでしょう。

ランニングのアプリには、モーションセンサーで自分のフォームをチェックしてアドバイスをもらえるものもあります。

アプリのそうした機能を活用すれば、タイムを伸ばすことから、今度はフォームを直す充実感が得られるようになります。運動の世界がぐんと広がります。

ただ、アプリが運動データを読み込み、「頑張りましたね」とほめてくれるとしても、やっぱり運動が続かない人は続かないようです。友人や家族から直接、「最近、顔色がよくなったね」と声をかけられたほうが、うれしいのかもしれません。

   <働き盛りにおススメ!忙しくても「運動を習慣化する秘訣」 いまのうちに鍛えないと、高齢期の健康に影響が/ニッセイ基礎研究所・村松容子さん>に続く。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
村松 容子(むらまつ・ようこ)
ニッセイ基礎研究所主任研究員析

2003年ニッセイ基礎研究所入社。
健康・医療分野における人々の不安・対処動向を研究。人生100年時代を見据え、健康長寿を願うなか、人々がどういった不安を抱えているのか、どういった対策をしているか調査・分析。
また、人々の健康課題の解決に向けて、国の健康・医療に関する政策を、生活者の視点から解釈し、伝えている。

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