日本と台湾は共に大規模な自然災害が多く、発災時にはお互いが支援し合っている。最近では2024年4月3日、台湾東部沖地震が発生。日本では台湾に、「今こそ恩返しする時」と支援を呼びかける声がSNSで広がった。
というのも24年1月の能登半島地震で、台湾では市民から募った寄付金が25億円を超えたのだ。11年3月の東日本大震災でも、200億円以上の義援金を日本側が受けたと報じられている。台湾がこれほどまでに、日本に寄付してくれた理由は何なのか。
寄付や支援の文化が根付く台湾
外務省は4月5日、台湾の窓口機関である日本台湾交流協会を通じ、100万ドル(約1億5000万円)規模の緊急無償資金協力を行うと発表。台湾の蔡英文総統は同日、「台湾の政府および国民を代表して、日本の皆さまに心より感謝申し上げます」とXで感謝した。
前述の通り、これまで日本で災害が起きるたびに、台湾で募金が集められ、送られてきた歴史がある。その背景を、日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)代表理事で日本大文理学部教授・赤松美和子氏(台湾文学研究)に取材した。
まず、1つ目に「寄付や支援の文化が根付いている」と指摘。「困っている人がいたら助けてあげたい」と思って行動する人が多く、寄付する文化も日本より遥かに一般的だという。また、教育や文化、公益、慈善団体などに対する寄付金が控除されるといった制度もある。
赤松氏によれば、東日本大震災における台湾からの義援金総額のうち、慈善団体などからのものが圧倒的に多い。台湾赤十字組織は総額の約38%、台湾仏教慈済功徳会が約32%を占めている。慈済功徳会は国内だけでなく、1991年のバングラデシュの台風による災害をきっかけに、国外の災害復興支援も行っている。東日本大震災もその一環だった。
「基本的には、日本だから義援金を送ってくれたのではなく、日本にも義援金を送ってくれたということになります」
と説明する。だが、日本と台湾の関係性も、日本に支援金を送る背景としてあるようだ。
日台関係における歴史・経済的要因も
赤松氏は、日台関係における歴史・経済的要因を2つ目に挙げた。阪神淡路大震災が起こった1995年は「ボランティア元年」と日本で呼ばれている。99年以降、トルコや台湾などへの国際ボランティア活動も行われるようになった。
99年に起こった台湾の「921大地震」では、日本の国際緊急援助隊が発災当日に派遣された。また、赤十字に集まった寄付金のうち5割以上が日本からだった。これらに対しての恩返しという経緯もあるという。
隣国である日本に訪れた人も多く、経済的にも密接な繋がりがある。「経済大国だと思っていた日本が、地震や津波で苦しんでいる状況を報道で見て、助けたいと思ったのではないでしょうか」。
3つ目は、「正式な国交がない中で、地方都市同士のつながりが大切にされてきた」点。東日本大震災以降、地方都市の姉妹提携などが盛んになり、現在130以上の都市が交流提携を結んでいる。「国交がない中で、災害などの人道的な支援は、国にとっても大切な外交の機会になっているようです」と、赤松氏は述べた。