破綻後に再復活へ 落としても殻が割れない「幻の卵」
――リポートで興味深かったのは、「倒産した企業には、新たな試みや画期的な農法を事業の核に据えたスタートアップ企業も少なくない」という箇所です。具体的例として「ワールドファーム」をあげていますが、ぜひとも生き残って日本農業の改革に貢献して欲しかったと、残念でなりません。
ほかにも、日本の農業を変えようとしたスタートアップ企業で、破綻に追い込まれた企業はありますか。
増田和史さん 斬新な試みをして生産した農産物を、JA(旧農協)を通さずに直接飲食店や学校給食に届ける事業を展開したことが、結局コロナ禍では裏目に出て、破綻したケースが非常に多いです。JAはある意味、総合商社ですから、その傘下にいることはコロナ禍のようなピンチには安全弁になります。
そんななか、逆に、一度経営破綻しながら2024年4月現在、復活に向かって動き始めた珍しい例として、高知県三原村に放し飼いで地鶏を飼育し、「幻の卵」を販売している「しゅりの里自然農園」(合同会社)があります。
経営者は青年海外協力隊に参加し、養鶏の普及に務めてきました。2002年8月、脱サラして三原村に移住。広大な村有地を借りて一から開拓を行い、「しゅりの里自然農園」をオープン。
地鶏の卵は落ちても割れないほど殻が固く、黄身だけをつかむことができる丈夫なものだそうです。全国にファンが多かったのですが、獣害や台風被害で経営が破綻。
債務整理には5年かかりましたが、夢をあきらめず、農場を復活させる新たな取り組みを始めていると、4月上旬、TBSニュースなどで報じられています。
――いい話ですね。日本の食糧確保のために行政や我々消費者は今後どうしたらよいと思いますか。
増田和史さん 農業を継ぐ人が圧倒的に少なく、日本中が休耕地だらけになっています。家族だけで農業をするのはもう限界です。会社経営の法人組織などが地主から休耕地を借りて、定期的に新卒採用などを行ない、給料を出す方式で人手を集めないと、日本の農業はやっていけません。
こうした挑戦的な試みに政府も支援を続けてほしいと思います。同時に、若い世代で農業に興味を持つ人は、ぜひこうした農業法人も就職先に選んでほしいと願っています。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)